法華寺は国宝を3点所蔵している。特別公開時は3点すべて見ることが出来るが、普段は十一面観世音菩薩立像と阿弥陀如来三尊及び童子画像は公開していない。唯一、常時見ることができるのが維摩居士坐像である。
維摩居士坐像は本堂の左手にある入り口にある受付の真後ろにいる。いつも牢屋のような部屋に鎮座している。受付を済ませるとすぐ見ることができる分、受付に気を取られると見逃してしまう。また、受付箇所がそれほど広い場所ではないため、団体客が入る時は構えて見続けることなく導線を譲る。来館者の邪魔までしてじっくり見たいかというと、単なるおじいちゃんの像なのでまじまじと見づらい。
この坐像は東大寺の良弁僧正坐像や唐招提寺の鑑真和上坐像などと並び、肖像彫刻の傑作と言われているそうで、乾漆像ならではのこまかいディテールが人間味を出している。2017年の調査で本体は木造で、衣の一部が乾漆造ということが分かり、単なる乾漆造と異なっていることから国宝指定となった。修繕などの調査結果で国宝指定を受けるケースが目立っていた時期だが、指定替えになったからといって扱いが変わらず、いつでも見ることができるのはうれしい限りだ。