国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

倭漢朗詠抄 太田切 静嘉堂文庫美術館

世田谷にある静嘉堂文庫美術館の品々が東京駅からほど近い場所で観ることがようになった。場所は丸の内の明治生命館で、その名も静嘉堂@丸の内。三菱1号館美術館は道路を挟んですぐの区画にあり、三菱系美術館のコラボ企画が期待できそうだ。

さて、丸の内の明治生命館は歴史的には占領下のGHQに接収され、昭和天皇マッカーサーが対面して写真が撮られた場所として知られている。近代建築物としては1997年に昭和に建築されたものとして初めて国の重要文化財に指定された。歴史的かつ文化的な建物である。その中に美術品の展示室を作る発想が素晴らしすぎる。美術を愛でながら、建物から出る雰囲気を味わう至極のひと時となること間違いなし。

新規オープンの企画は響きあう名宝と題して静嘉堂文庫美術館が所有する名宝の数々と国宝7点をすべて見せる(国宝は前期のみが出そろう)。昨年の三菱150周年記念展でも見たものばかりだが、重要文化財の建物で観られるとなっては行くしかない。

まず、丸の内の明治生命館の周りを含めて大改装が行われていたようで、展示場の入り口は外ではなく、エントランスの室内からとなっていた。最近の美術館では多い、ビル内展示場を思わせるが、入ると雰囲気は一変して重厚な建物であることが伝わってくる。ただ、壁などは綺麗な透明な板でデコレーションして、文化財保護と古さを忘れさせる配慮がされていた。

中に入ると、中心部に2階までの吹き抜けのホワイエ(休憩スペース)があり、鏡張りでハイジュエリーでも販売しそうな雰囲気であった。ホワイエを囲むように3つの部屋+1部屋があり、そこが展示場となっている。昭和の建物でビジネス用に造られた執務室を改装しているので、個々の部屋自体はそれほど広くない。

第1室は入り口から見て右側の部屋で、静嘉堂文庫が誇る茶道具を展示していた。千利休生誕記念の展示会が各地で行われており、名物たちがこれでもかと共演している。本来ならばそこに静嘉堂文庫所蔵が大量に出ていてもおかしくないはずだが、さすがに丸の内デビューを優先した。大名物の唐物茄子茶入付藻茄子、松本茄子、木葉猿茄子の3つが並び、虚堂智愚の墨蹟が花を添える空間は、戦国大名なら末代まで伝えられる最高の接待となったことだろう。

そして、同室唯一の国宝である倭漢朗詠抄があった。舶来でカラフルな唐紙に金銀泥で下絵が描かれた上、仮名文字と漢字が交互に書かれ、流れるような出来栄えとなっていた。茶室の床の間ように断簡されることがあるため、このサイズで残っているのも素晴らしい。茶道具の横で掛け軸状になっていない書を見るのも新鮮だった。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。