国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

短刀 銘来国俊 熱田神宮

JR東海道線名古屋駅金山駅周辺はビルが立ち並び都会に来たと感じるが、次の熱田駅に降りると下町感が漂う。熱田神宮の参拝客用に出来た駅だが、参道商店街には昭和が色濃く残っている。一方で、名鉄神宮前駅の駅ビルは取り壊し中。綺麗な施設が出来上がるまでは時間がかかりそう。

名古屋の中心からは少し南に外れる熱田神宮だが東海へと抜ける要所にあり、織田信長桶狭間の戦いの前に戦勝を祈願して見事に勝利を収めた歴史的な場所である。戦に勝った神社であり、それが織田信長の出世街道の起点となった事件であることから、多くの宝物が奉納されている。

多くの宝物を見せるため、熱田神宮境内に宝物館とは別に、草薙館という展示施設が2021年10月3日にオープンした。天皇を象徴する三種の神器のひとつ草薙の剣から名前を取った施設である。展示は刀剣が中心で、熱田神宮が所有する国宝刀も当然、そちらに展示されているものと思い込んでいた。新館へ行くその前に宝物館も覗いておくかと軽い気持ちで両館共通券を購入して、中入ると、いの一番に国宝の来国俊を展示していた。国宝は真新しい施設ではなく旧来からの施設に展示してあった。刀剣ブームが続いていることから、宝物館にも客寄せパンダの刀剣が必要なための措置かもしれない。もしかしたら、裏表両方から見える配置が出来る箇所で、もっともしっくり来たのが入り口近くだったのかもしれない。

さて、国宝の短刀の表面には作者名・来国俊、裏に制作年の正和五年十一月日が彫られている。これにより、来国俊が76歳のときに作った刀と分かるが、後期高齢者が作り上げた刀だと思うと、あっぱれと言いたくなる。職人の技量のピークがいつなのかは分野によって違いがあるものの、少なくとも刀鍛冶は機械化以前は鉄を鍛造しなければならず体力がある方がよいものを作れると想像する。健康食品の通販ではないが、この短刀を作った人はいくつにだったかという質問に70歳以上と答える人はほぼいないだろう。短刀の刃文は、真っ直ぐで乱れの無い直刃で見ていると清々しい気持ちになるぐらい乱れがない。来国俊作の国宝は来孫太郎作を含むと5振あり、この点でも高く評された刀鍛冶であることが分かる。草薙剣を祀る神社にある唯一の国宝刀に相応しい。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。