徳川美術館の「名物―由緒正しき宝物―」には刀剣女子と思われる人々が多く来場していた。男女比では1:9ぐらいの割合で、改めて根強い人気を確認できた。
名物に展示されている国宝は刀剣ばかり。その中でも個人的に好きな刀である庖丁正宗が出品されていた。日本刀の刀身はすらっとした姿のものが多く、鋭利な刃物であることが見て取れる。一方で、庖丁正宗はでっぷりとした刀身で、短刀の短さとあいまってフォルムがゆるく見えてしまう。
正宗は岡崎正宗によって鎌倉時代に作られた刀で、国宝の庖丁正宗は奥平松平家伝来で永青文庫所蔵と内藤家伝来で錦秀会所蔵がある。徳川美術館が所蔵するものがふっくらして包丁に近い。武器と言うより、道具といった感じだ。徳川家康の所蔵から続く名品である。
本展示会では、これら名物に加えて、それを受け継ぐための保管用の袋や箱も一緒に展示していた。あっさりとしたカバーもあれば、刺繍に凝った袋があったり、漆塗りで螺鈿細工までもあしらった箱もあった。延暦寺の唐櫃とまではいかないものの、重要なものを保管していると意識づけさせるためには凝ったものに保管することが効果的なのだろう。