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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

線刻仏諸尊鏡像

泉屋博古館東京は最寄り駅の地下鉄・六本木一丁目駅からはエスカレーターを乗り継ぐこと数分。高台にたどりつき少し歩くと館が見える。周りが住友グループが建てた高層ビル群に囲まれているため影が多く少し涼しい。ビル群が完成する前は都内を一望できる場所だったことが想像できる。駅からの移動は都会の摩天楼を掻い潜り異空間へと誘う、そんな演出かもしれない。

泉屋博古館分館は中国でコロナが流行りだした2020年1月に改修工事を着工。当時は「東京オリンピック2020で海外から旅行客がわんさかと来日するのにもったいない」とひそかに思っていたが、この間に全国の美術館が一斉に閉鎖されたり、展示会の中止が相次ぐなど、こんな世の中になるとは想像していなかった。

そして2022年春、リニューアルを終えて再開した。名称は泉屋博古館東京へ変更して、独立した展示会場となる意気込みを感じた。意気込みだけではなく、リニューアルで展示スペースが増床されていた。改修前のイメージはそのままで、エントランスを挟んで二部屋だったのが、4つの部屋で展示できるようになっていた。大きな改修ポイントは今回の展示会で写真撮影可能なエントランスの壁の奥に通路上の展示スペースを作り、導線を確保していた。前までは左右に分かれた展示室を移動するのに、どうしても一度はエントランスを通る構造だったので観覧気分がリセットされていた。これで集中力が継続するのでありがたい。あと、追加された展示室は受付の裏付近、ロッカーなどがある場所で、少し離れているので企画内容と関連するオリジナル展示場所となっている。今回は住友家の文具四宝を飾っていた。テーマが東洋美術とあって、それらを創作する道具に焦点を当てていた。

さて、泉屋博古館東京のリニューアルオープン記念展は第三期の最終回。住友家が所有していた名品を惜しげもなく公開している。日本画、西洋美術とあり、東洋美術にスポットを当てていた。泉屋博古館といえば、古代中国の青銅器コレクションで、京都の本館ではそれらを見せるだけの建物がある。さすがに、それらをすべて公開するスペースはなく、選りすぐりの名品のみが展示されていた。

線刻仏諸尊鏡像は第二室、エントランス裏の通路状の展示スペースに陳列。古代中国コレクションの最後を飾るような配置となっていた。泉屋博古館の特徴かもしれないが、国宝であろうと重要文化財であろうと全く主張させない展示をしている。言い換えるとどの美術品も同列で展示する。なので、気をつけないと見逃していしまう。今回もリストをチェックしていなければ危うく素通りしてしまうところだった。

鏡像は本館で見るよりも明るく照らされていて、刻まれた仏たちがしっかりと確認できた。また、仏の絵解きがあり、分かりやすく解説されていた。鏡の表面の展示のみだったので、裏面の細工は見ることができなかった。鏡を置いて裏面も観られるようにする博物館などが増えつつあるが、泉屋博古館らしい武骨な展示となっていた。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。