黒川古文化研究所の展示室はそれほど広くはなく、名品展では余り展示数は多くない。その中で、鈴木其一や渡辺崋山の江戸時代中期の日本画の名品や、伏見天皇宸翰御願文は重要文化財に指定される名品である。
その中で一番の名品は短刀の銘来国俊である。来国俊の銘が刻まれている数少ない刀剣で、来国俊の代表作のひとつにかぞえられる。大和郡山藩柳沢家伝来で、上野館林藩士だった柳沢吉保が5代将軍の徳川綱吉から賜った。柳沢吉保は元禄時代に大老格として幕政を主導。王朝文化への憧憬を強く抱いた文化人でもあり、江戸に六義園を造営した 。
来国俊は鎌倉後期の刀工で、山城(京都)で活動していた。来が付く国俊と来がつかない二字だけの国俊存在し、来国俊は5振が国宝の指定を受けている。短刀が多く、刃文は直刃となっている。乱れた刃文に比べて、実直感があり素直に美しいと思える王道の刀だ。