仏涅槃図は高野山の名宝展、ラストを飾るにふさわしい作品だ。
入滅した釈迦を囲む人々(神々)に加えて、神獣たちも悲しみ悶える図は去る者が如何に慕われているかが一目で分かる。3月15日に各寺院で行われる涅槃会では涅槃図が所狭しと講堂に掛か画られるが登場人物・動物の多さにびっくりする。また、悲しむ姿はかなりデフォルメされているので、それ単体で見ると滑稽な姿なものも散見される。ただ、高野山の図は神獣が少なく、登場人物たちもそれぞれ普通に悲しむ姿が描かれている。涅槃図ができた初期の頃の作品なのでオーバーな表現がなく、落ち着いた大人の悲しみを描いている。両サイドに巨大な両界曼荼羅図の複製に負けず劣らずの大きさがある。高野山名宝展の作品はどれも大きなものが多く、普通の博物館では展示すらできない。この4回の展示会で見た作品を一度に見ることは当分ないだろう。霊宝館100年記念だから企画できた展示会。次は150周年記念に期待したい。