大阪市立美術館で開催されている聖徳太子展の目玉展示は丙子椒林剣だ。巡回地のサントリー美術館では七星剣が展示される予定なので、四天王寺が保有する古代の剣2振りが会場を替えて登場する。
展示は入ってすぐの部屋の奥でしていた。懸守の展示が地味だったのは、そのすぐ横に丙子椒林剣が展示してあったことも影響していたかもしれない。いわゆる反りのある日本刀と違い直刀であった。反りは平安時代に取り入れられたのだから当然だが、刃は片方にしかないのは日本刀のルーツを見ているようだった。銅剣などの古代の出土品は両刃が多いので、変化の過渡期の刀なのかもしれない。刀身はそれほど厚く作られていないので見た感じは軽々と扱えそうで、戦闘向きというより儀式などで使われる部類のものだった。聖徳太子は体育会系のイメージが全くなく、文科系の作戦官的な役割だったのだろうから、あくまでも飾りに過ぎないからだろう。
刀には腰元の平地に金象嵌で「丙子椒林」と隷書体で刻まれている。丙子は干支で、聖徳太子が活躍した時代なら556年となり、百済より仏教がきた欽明天皇の時代となる。聖徳太子は和を以って貴しとなすの精神を広めたが、和に準じない人々もいるので武力の象徴である刀が必要となる。丙子椒林剣や七星剣は和を広めるための重要なツールであるため今日まで受け継がれたのだろう。
さて、丙子椒林剣の展示の横には七星剣の模造が展示してあった。大阪市立美術館では見ることができないとばかり思っていたが、模造とはいえ見る機会を得れたことは素直に驚いた。これでサントリー美術館へ俄然訪れたくなった。正倉院の模造や綴プロジェクトなど、本物に近い形での模造は文化財に触れる機会を増やすので、企画趣旨に合った場合は積極的に貸し出しや展示をしてほしい。