京の国宝で一番見ごたえがあった展示は神照寺の金銀鍍宝相華唐草文透彫華籠16面と寺から流出した3面を合わせた計19面の一気展示だった。もともとは20面あり、ハワイへ旅立った1面は里帰りを果たせなかった。それでも一度に19面もの華籠が展示されているのは壮観で、1面単独や他の種類の華籠との競演でしか観たことがなかった金銀鍍宝相華唐草文透彫華籠が国宝すべてと流出品を合わせた形で会えたのは良い機会であった。
華籠は唐草文様の透かし彫りで、くねくねと曲がった蔓とその先に花を咲かせたり、つぼみで咲く手前だったりと意匠性に富んだものとなっている。奈良博三昧を観た後で奈良県立美術館で開催されていたウィリアム・モリス展を観に行ったが、そのデザインの素晴らしさが平安時代の日本の工芸職人にも備わっていたと思うと、改めてレベルの高いものを観ていることに気づく。着物の柄などで繰り返し同じデザインを重ねてパターン化するのは大量生産ができる近現代なら合理的だが、中世において同じパターンのものを手作りするのは大変な苦労があったに違いない。様々な国宝が出品されていたが、最終盤になってに圧倒的な質量での展示はまさにみやこの宝であった。