奈良博三昧の国宝出品は通期展示を除くと前期が多くて、後期のみは辟邪絵と金剛般若経開題残巻だった。金剛般若経開題残巻は空海筆で、前期に展示のあった最澄筆の久隔帖と見比べたい逸品である。
最澄と違い空海は平安の三筆に選ばれるぐらい書の名人のイメージがある。高野山で開催中の霊宝館開館100年の展示会では若き空海が書いた聾瞽指帰が展示。若さゆえの力強さが感じられる作品である。一方で金剛般若経開題残巻は優雅にリズムよく書かれている。経典と言えば写経生によるきっちりとした字で書かれたものをよく見るが、個性的な書き方の古いものを見る機会はなかなかない。
奈良博三昧は仏教の殿堂として奈良博が誇る所有物を惜しみなく公開した展示会で、同館所有物のみで構成したことからすべて写真撮影までOKだったので大満足の展示会だった。惜しいのは仏像館の方でもすべて撮影可能だった最高だったが、高望みなのかもしれない。