京の国宝も後半戦へ突入。メインビジュアルとなっている俵屋宗達の風神雷神図屏風は1週間限定での展示だった。年始のアーティゾン美術館の企画展「琳派と印象派」でも感じたが、期間限定の作品がメインを飾っていると、特別展期間中はいつでも会えると勘違いしてしまうので、なるべくなら通期展示のものにしてほしい。
さて、後期のお目当ては風神雷神ではなく、厳島神社の小桜韋黄返威鎧だ。ここ数年、ほぼ展示会などには出品されていない。展示場所は1階の奥の独立した部屋の中央に飾られていた。2017年の国宝展では曜変天目などが展示されていた位置で、360度どの角度からも見ることができる絶好の配置となっていた。
小桜韋黄返威鎧は兜と鎧が一つのショーケースに別々で置かれていて、ちょうど良い目線で両方とも見ることができた。戦が活発化して源平盛衰の世の中となった平安末期の製作物とされ、源為朝が奉納したと伝わっている。甲冑の板を結びつける糸がとても綺麗で、同部分の文様もはっきりと残っていた。兜に飾りの角がなく頭部がシンプルなのも時代を感じる。実戦的に使用するというより、奉納を主眼とした美術品と言って間違いない。
国宝の甲冑は十数点しかなく、奉納された神社で大切に守られてきた。指定を受けているのは櫛引八幡宮、武蔵御嶽神社、菅田天神社、春日大社、大山祇神社、そして厳島神社のものだ。全国に散らばっている上に、春日大社、厳島神社は特別な機会に少しずつ展示されるので、その機会を見逃さずに会いに行くことが必要だが、菅田天神社のものは公開そのものがほとんどない。小桜韋黄返威鎧を観れたことで甲冑国宝完全観賞までもう一息となった。