国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

拝殿 石上神宮

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ここ数年、若冲が描く鶏を美術館などでよく見る。羽の一本一本細かく描かれた鶏は写実を通り越して超絶技巧の域に達している。そこではたと気が付いたのが、本物の鶏を見たのはいつだったかだ。記憶をたどると石上神社へたどり着いた。

昨年の今頃、横浜港に滞在していた豪華客船で発生したコロナ問題が大きな話題になっていた最中に東博で開催された大和と出雲展。奇跡的に見に行くことができて、大変満足した展示会だった。そのお目当てのひとつである七支刀の所有神社である。寄託しているので現地では見ることはできない。

石上神社は奈良県天理市にある。天理と言えば大学ラグビーで久しぶりの関西勢で優勝した大学があることでもおなじみ。宗教都市と言って過言ではない独特の雰囲気がある町である。しかし、石上神社は全く別物。古式ゆかしい神社で、山門をくぐると背の高い木々に囲まれた参道があり静かで薄暗い雰囲気となる。そして、開けたと思うと石上神社の側面が現れる。山門から見ると神社の正面は90度傾いていて、大神神社のある方を向いている。

伊勢神宮と並ぶ日本最古設立の神社で、物部氏が祭祀を勤めていた。そのため、ヤマト政権の武器庫としての役割も果たしてきたと考えられ、蘇我一族の台頭により神社全体が戦闘力を失い、僧兵が台頭する時代へと変貌する。国家神道から仏教崇拝、神仏習合へと変遷する。その前の風景が未だに残る神社である。

さて、石上神社の神の使いは鶏である。約30羽ほどが飼われているそうで、東天紅鶏烏骨鶏など珍しい品種もいた。本物の鶏と若冲の絵と比べて、鮮やかさは本物とそん色なく、動くこと以外は若冲の絵は生き写しといってよい。一方で、本物の鶏は寒さのため小屋に閉じこもって丸まっていた。この風景は若冲水墨画であった構図で、動が彩色、静が水墨画で描き分けていたかもしれない。

 

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。