東寺に関連した国宝として、塔頭寺院の観智院がある。東寺の境内の北の端にある宝物館に一番近い出入り口にあり、春秋の特別公開時に開かれている。共通拝観券で観ることができるのもうれしい。
大徳寺や妙心寺などの塔頭寺院は大きな敷地内にある雰囲気を残しているが、東寺に関しては写真のような閉ざすための扉が備えられているので、境内にある雰囲気はない。おそらくは洛南高校が隣接するため、時間外に東寺境内に入られないための処置であろうが、どことなく仕切って開放感がないのは密教の特性からくるものかもしれない。
さて、観智院のみどころは宮本武蔵がふすまに描いた鷲の図。剣豪で知られる武蔵だが、絵もそこそこ残しており、展覧会などでしばし見受けられることがある。御世辞にも超一流の画家と並び評することはできないが、独特の味のある水墨画は剣豪として文化も嗜んでいることの表している。侍は仕官するためには文武両道でなければならず、その意味では一流なのだろう。その他の見どころとして、庭は枯山水で五重塔の先っぽが見えるなど東寺の塔頭寺院らしさを演出している。
こじんまりした庭園と建屋ではあるが、観智院自体は東寺のみならず真言宗全体の勧学院と位置づけられていたようで、多くの学僧を輩出している名門寺院。数々の僧侶が弘法大師の教えを学んだ場所だが、比叡山延暦寺が輩出した名僧たちに比べると名前が出てこない。大都会での勉学よりは人里離れた場所の方が没頭できることを証明していており、現代に置き換えると東大より京大の方がノーベル賞受賞者が多く出ている現象に似ているかもしれない。