文館詞林残巻は高野山の塔頭寺院・正智院と宝寿院が所有している。それぞれのものが国宝にしていされている。Ⅰ期には正智院のもの、Ⅲ期には宝寿院のものが登場する。
唐の時代に編纂された勅撰漢詩文集で、漢から唐初までの詩文を収めている。隋唐以前の文学を集めた「文選」に次ぐ最古の総集である。もともとは1000巻あったのだが、時代と共に散逸し、中国には残っていない。日本に持ち込まれた中で、高野山に伝わるものが現存物として国宝に指定されている。
正智院は12巻の文館詞林残巻を所有している。空海がブレイクしたのは遣唐使として様々な大陸仏教文化を持ち帰って、朝廷に認められた。もしかしたら、これもその一つかもしれない。その意味で、聾瞽指帰から文館詞林残巻へと続く配置は第Ⅰ期の展示の締めに相応しい。