文館詞林残巻は高野山の塔頭寺院・正智院と宝寿院が所有している。それぞれのものが国宝にしていされている。Ⅰ期では正智院のものを観た。そして、Ⅲ期には宝寿院のものが登場していた。
Ⅰ期でも書いたが漢から唐初までの詩文集で、隋唐以前の文学を集めた「文選」に次ぐ古さである。本国の中国には残っていないそうで、書写したものが高野山に残っている。名品展を改めて見返すと、高野山で保管されたことで未来へ引き継げた文化財が非常に多い。修行の場としては比叡山と並び立つが、高野山は都から遠い立地のため、大きな戦火とは縁遠く文化財の散逸や焼失を免れる結果につながっている。山の中なのに生活が完結できる立地を探し当てた空海の先見の明はさすがである。