国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

【京博名品展】法華経巻第七(運慶願経) 真正極楽寺

書や仏教の展示で経典が陳列されていることがよくある。そして、ご多分に漏れず意味も分からず、読み砕くこともできないので、ほとんどの場合は文字を眺めて終わる。その時の感想は決まって「うまい文字を書くものだな」。で、その文字は専門の職人がいることと、その方々が書いているということを数年前に知った。完璧に書いたらボーナスが支給され、失敗すると罰則金を取られるそうで、パソコンの文字入力でも間違いが多いので到底勤まらない職業である。

さて、職人は職人でもこちらのお経は仏師が奉納したもの。国宝彫刻の第一人者である運慶が奉納した日時が分かる貴重な資料で、彫刻にも自分の名前を彫るぐらい自己顕示欲が強いからこそ現代まで残るものが造れる。

【京都名品展】古今和歌集(曼珠院本) 

カラフルな色紙に書かれた古今和歌集。こちらも藤原行成筆の可能性があるようだが、伝承などに残っていないので作者不明。

京都の北東にある曼珠院は比叡山と御所の間にある。御所からはちょうど鬼門の位置にあり、近くには修学院離宮赤山禅院などがある。国宝は古今和歌集のほかに、不動明王像(黄不動)を所有。補修の時に発見されたお腹辺りに小さな隠し不動明王像の痕跡が見つかったこともあり、国宝展では目玉の展示物のひとつであった。

この古今和歌集はほとんど仮名で書かれており、その流れるような書体は雨粒が滴り落ちるようで、文字自身に速さを感じる。筆さばきのみごとさを堪能できる作品である。

一字蓮台法華経 龍興寺

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奈良博でも夏休みに合せて企画展を実施している。どうぶがモデルの美術品を集めたいのりの世界のどうぶつえんは子供たちも多く来ていた。ただ国宝が地獄草紙や地獄草紙、辟邪絵とトラウマになりそうな絵があり、囲ってみたい人だけに見せる配慮をしていた。

さて、国宝で一番目についたのは龍興寺の一字蓮台法華経。一字に一つの蓮の絵が描かれていて、経文6万9384字もの蓮の中に字が浮き出る気の遠くなる作業で完成させた代物。福島県にある国宝物3つの中のひとつ。観ているだけでいち早い震災復興を祈念せずにはいられない。

 

【京博名品展】書巻(本能寺切) 藤原行成筆

三蹟の一人、藤原行成の書で国宝は3点。東博の白楽天詩巻と正木美術館の後嵯峨院本の白氏詩巻、それと今回出展の本能寺所有の書巻である。

最初の2つは平安貴族に好まれた白居易の詩文を独自の書風で書いたもの。それに対して書巻は雲母刷のある唐紙に菅原道真小野篁紀長谷雄たち日本人の文書を漢文で記したもの。鎌倉時代に入ってくる禅宗の生真面目で堅苦しい文字とは対照的に、やわらかでリズミカルな文字で、平安中期の時代にぴったりの文字である。

【京都名品展】灌頂歴名 空海筆

メモ帳などに執る覚書。清書する前の走り書きが国宝になる。それが書の名人である空海のものだと当然だろう。

灌頂を受けた人のメモで、かなりの走り書き。書の名人で様々な書体を使い分けることができる空海。だが、素の空海が書いた文字なので人間性が出ている書となる。

さて、平安時代に突如としてブームとなった密教。灌頂を受けることで指導者となることができるとあって、我先に受講した。その初期メンバーが分かる資料。おそらく清書したものは寺院の丸秘文書として大本山で大切に保管されているので、一般の目には留まらない。なので、同書は歴史のターニングポイントを語る貴重なものである。

【京博名品展】大般若経 太平寺

書籍エリアの展示はすべて国宝。しかも掛け値なしの名品と展示の少ない貴重国宝で固めている。

大平寺の大般若経長屋王が発願して作った経典。長屋王とは、天武天皇の長男である高市皇子の皇子で、天皇の孫にあたる嫡流筋の人物だ。しかし、藤原家との対立に敗れて自害した。そんな曰くつきの経典だが、常明寺にも残っておりこちらも国宝。同時期にMIHOミュージアムで展示もされている。

長屋王に関しては奈良県二条大路南で大量の木簡が発見され、そこが邸宅跡であったことが分かっている。ただ、その場所は商業施設が建てられ、記念碑のみが残る。平城京に近く、権力を持っていたことが分かる。

【京博名品展】秋景・冬景山水図 金地院

日本には四季があった。最近は暑い夏の後、すぐに冬が来て、ゲリラ豪雨の梅雨が明けると夏が来る三季になりつつある。せめて絵の中だけでも四季を感じたい。それを留めたのが金地院所有の秋景・冬景山水図だ。

夏は久遠寺が所有し、春は失われた。3幅すべてに足利義満所有の印が押してあり、室町将軍が所有した名品である。土佐派や狩野派などが描く襖絵など色鮮やかに作られた四季とは違い、モノトーンの絵が主張しすぎず禅様真っ盛りに好まれた作品らしい。四季に合わせて床の間に飾られただろうが、現代なら中間に豪雨の絵も必要になる。

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。