国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

【お守り刀】太刀 吉房 林原美術館

 

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福岡一文字派の代表工、吉房の作品。

古い刀は騎馬上で振るうことを想定して、かなり長く造られていた。そのため、時代を経るとともに使いやすい大きさに加工してあるものが多い。その簡単な見分け方として、柄が備えられる部分の目釘孔が複数空いているものは造り変えている証拠となる。同刀は一つしか空いておらず、原型に近い状態で受け継がれてきた。同刀は今見ると少々長い太刀に感じるのも改変されていないためかもしれない。

【お守り刀】短刀 名物九鬼正宗 林原美術館

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短刀の展示会にとても合った国宝。

正宗は鎌倉幕府お抱えで相州の代表的な刀工。同刀は伊勢国鳥羽藩の九鬼家が所有していたことが名の由来。関ヶ原の戦いで親子が分かれて戦ったことへの謝罪?のため、九鬼守隆から徳川家康へ献上した刀だ。その後、紀州徳川家を経て伊予西条松平家に伝来した。はじめは小早川隆景が所有していたものだ。

正宗は国宝指定が9振りもあり、鎌倉時代から続く源氏武士にとっては刀の代名詞。なので徳川・松平の系譜にとってはもっとも価値が高い下賜品となる。なお、伊予西条松平家江戸屋敷跡は現在の青山学院となっている。

【お守り刀】太刀 長光 林原美術館

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岡山の林原美術館で恒例となった、現代の刀鍛冶たちの作品を展示・表彰する「第十二回お守り刀展覧会」が開催されている。もちろん実用もできる造りだろうが、あくまでも観賞用。守り刀なので、短刀が中心で刃紋が綺麗に仕上がっているなど、見入って取りつかれそうだった。

林原美術館の所蔵品には国宝指定の刀が3点ある。長光備前長船派の巨匠。長光が偉大だったこともあり、それ以降の系譜の刀匠には光の文字がつくことになったぐらい、尊敬されていた。岡山の美術館が所有する刀として申し分ないものである。

【平等院】雲中供養菩薩像

2018年。世の中は大人数アイドルグループ人気のピークが来ている。おニャン子クラブに始まる大量アイドル生産は30数年の時を経てビジネスモデルを確立した。仏教界でも大人数仏全盛期があった。十二天像や十六羅漢、二十五菩薩、五百羅漢などがある。その中で、他で見かけないオリジナル大量仏集団が雲中供養菩薩52体だ。

すべての菩薩が雲に乗って、楽器を奏でていている姿は、ローラースケート(光ゲンジ)と演奏(TOKIO)を足したハイブリットアイドルを彷彿とさせる。堂内の高い位置に掲示されていて、52人すべて違う楽器を奏でていて、とても楽しそうだ。

二十五菩薩はお練りで今見られる仏になっているが、52人でも一度やってほしい。なお、お堂では国宝指定のものは半分の二十六体を観ることができ、残りは宝物館に展示してある。

【平等院】木造天蓋

定朝作の阿弥陀如来坐像をじっくり観ていると、案外見逃してしまうのが天井との間にある木造の天蓋。如来に合わせて造られているので一体として観がちで、考えようによっては建物一部に観えるのが、列記とした国宝物である。

平等院阿弥陀様以上の大きさの仏様で天蓋がついていたパターンは観たことがない。大体が天井が見えている。天蓋の細かい彫刻があり単独で観ると雰囲気が分かるのだが、建物と如来の間にあるものとしか思えないのが残念である。

【平等院】阿弥陀如来坐像

浄土思想には阿弥陀如来がサポート役として必須である。阿弥陀さんが天から人々を救い出すために念仏を唱えて主張するというのが庶民信仰の定番である。そんな阿弥陀様を誰も観たことがない(はず)。しかし、阿弥陀如来と言えば平等院に坐しているものを無意識に想像してします。それは、平安仏師最高峰の定朝が造った仏で、それがデファクトスタンダードとなったためである。

それまでの仏像はどことなく大陸から来た人の雰囲気があり、輸入されたデザインであった。それが、遣唐使の廃止を引き金に国風文化が台頭し、仏像彫刻でも日本オリジナルが求められるようになった。そして権力者たちが喜び、誰もが観ていて心がほっこりする定朝様式が一世を風靡した。藤原氏の権力が定朝ブームを起こしたことは疑いようのない事実である。それに反発する慶派ブームが起こるのは鎌倉時代で、権力が武士の時代になってからだ。権力者が文化の成長も引っ張る。

【平等院】鳳凰堂

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平等院の最大の見どころは池に浮かぶように作られた鳳凰堂のフォルムだろう。中華風の建築様式に翼のように広がる堂の形。各地の寺院が変形ロボットにデフォルメされた場合、もっとも変形しそうな寺院ランキングで第一位にだろう。いつ飛び立ってもおかしくない構造は終末を迎えた世界の箱舟になるために造られたのかもしれない。

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。