南宋画の傑作にして東山御物のひとつ。徽宗皇帝筆とされる夏秋冬、国宝三幅の山水画が勢ぞろい。その中で夏景は老師が大きな松を揺らす風景が描かれている。構図の中では老師は小さい。だが、見た瞬間に空間に吸い込まれ、雪村の呂洞寶図ぐらい、大きく描かれた老師が風を呼び起こしている錯覚に落ちた。それくらい、迫力を感じる絵である。
また、秋は鶴の羽根の音、冬は猿の啼き声が聞こえてきそうなだ。ただし、両絵ともに鶴と猿がいると聞いていないと見落としてしまいそうなぐらい小さい。
仏像の表情は時代によって流行がある。円派は柔らかい表情で中肉的、慶派は厳つい顔つきで肉感的など、派閥によっても違う。そんな中で出品されている教王護国寺の兜跋毘沙門天立像は、お笑いコンビ・コロコロチキチキペッパーズのナダルのように面長で目がクリクリとして愛らしい顔をしている。足元の地天女と二鬼もキャラクターとして際立っている。唐からの輸入品であるようで、日本で制作した仏像のように細かさよりも大胆さが良さを引き立てている。
中国留学は海を渡って行き来することから極めて危険な旅であった。留学に当たり幾艘も難破して留学・帰国ができないことがざらにあった。そのため、留学を終えて無事に帰って来ることはそれだけで誇れることである。雪舟などは中国へ留学したことを常に自慢していたそうだ。
それほど、困難な海外留学事業は昔は国費で行われていた。貿易も兼ねていたことから、帰国後したのち、朝廷へ品々を献上した。その献上品を仕分けして書いた目録が請来目録である。朝廷(留学の出資者)への報告書であるため、非常に丁寧で分かりやすく書かれている。弘法大師が持ち帰ったものの目録も最澄が書いたようで、この留学を仕切ったのが最澄だったからだろう。芸術性はないが、真面目さが伝わる書跡である。