国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

【国宝】夏景山水図 久遠寺蔵

南宋画の傑作にして東山御物のひとつ。徽宗皇帝筆とされる夏秋冬、国宝三幅の山水画が勢ぞろい。その中で夏景は老師が大きな松を揺らす風景が描かれている。構図の中では老師は小さい。だが、見た瞬間に空間に吸い込まれ、雪村の呂洞寶図ぐらい、大きく描かれた老師が風を呼び起こしている錯覚に落ちた。それくらい、迫力を感じる絵である。

また、秋は鶴の羽根の音、冬は猿の啼き声が聞こえてきそうなだ。ただし、両絵ともに鶴と猿がいると聞いていないと見落としてしまいそうなぐらい小さい。

国宝 Ⅲ期 観たい・コラボ

 

前半戦が終わった国宝展。雪舟押しの前半は予想通りの混雑で、それ以上ではなかった。しかし、11月の京都は紅葉シーズンと重なり、一年で最も混雑する。これに合わせて地方から大挙して見に来ることが予想される。また、Ⅰ・Ⅱ期からの大幅入れ替えがある。六道が肖像画仏画と近世画(屏風)、漆細工などもほぼ入れ替えとなる。

 

Ⅲ期

書跡 真草千字文(前半のみ)、源氏物語奥入(後半のみ)

考古 金印

仏画 不動明王像(黄不動)

肖像画 随身庭騎絵巻、伝源頼朝

中世画 伝周文作、

近代画 長谷川親子、雪松図屏風

中国画 観音猿鶴図 牧谿

彫刻 薬師如来坐像 

陶器 鶉図

絵巻物 源氏物語

染織 懸守

金工 短刀 銘 左/筑州住

漆工 梅蒔絵手箱

【国宝】紺絲威鎧 厳島神社

平安時代の大鎧で、完品はかなり貴重なもの。綺麗に保存されているのは、平重盛厳島神社への寄進物だから。色あせた紺糸と(のちに補修した)紫糸のコントラストが絶妙で見ていてほれぼれする。春日大社源義経が使った(とされる)籠手などに見られる不必要な金細工などはない。奉納を念頭に置いて作らしたものでなく、実際に使えるものを奉納したのだろう。

ただ、美術品としての扱いならようが戦闘用の道具であるので、武士としては使用して刀傷ぐらいつかないと説得力がない。

【国宝】木造兜跋毘沙門天立像 教王護国寺

仏像の表情は時代によって流行がある。円派は柔らかい表情で中肉的、慶派は厳つい顔つきで肉感的など、派閥によっても違う。そんな中で出品されている教王護国寺の兜跋毘沙門天立像は、お笑いコンビ・コロコロチキチキペッパーズナダルのように面長で目がクリクリとして愛らしい顔をしている。足元の地天女と二鬼もキャラクターとして際立っている。唐からの輸入品であるようで、日本で制作した仏像のように細かさよりも大胆さが良さを引き立てている。

【国宝】伝教大師請来目録 最澄筆

中国留学は海を渡って行き来することから極めて危険な旅であった。留学に当たり幾艘も難破して留学・帰国ができないことがざらにあった。そのため、留学を終えて無事に帰って来ることはそれだけで誇れることである。雪舟などは中国へ留学したことを常に自慢していたそうだ。

それほど、困難な海外留学事業は昔は国費で行われていた。貿易も兼ねていたことから、帰国後したのち、朝廷へ品々を献上した。その献上品を仕分けして書いた目録が請来目録である。朝廷(留学の出資者)への報告書であるため、非常に丁寧で分かりやすく書かれている。弘法大師が持ち帰ったものの目録も最澄が書いたようで、この留学を仕切ったのが最澄だったからだろう。芸術性はないが、真面目さが伝わる書跡である。

 

【国宝】聾瞽指帰 弘法大師筆

ブラタモリでも取り上げられた聾瞽指帰。24歳の空海が高級官吏の道を捨てて仏門へ出家する決意を書いた書物である。決心を固めるために起草したので筆圧は力強い。空海は様々な顔がある。密教の伝道師にして宗教家、書道の達人、治水事業の監督などがある。前の2つは国宝展でその一端を観ることができる。治水は四国の満濃池の改修工事やなにもなかった高野山を一大宗教都市に仕立て上げるなど、治水の知識が相当あったのだろう。おそらくは官吏の限界を超えて、大きな事業を成し遂げる近道として宗教があったのだろう。その点が仏教に愚直だった最澄との評価の違いがある。それなくして今日の弘法大師は語れない。

【国宝】後宇多天皇宸翰御手印遺告

相撲取りかプロレスラーか、手形を紙へ押す人はそう多くない。ところが、書物が本物であるということで手形を押し、それが後宇多天皇だったら国宝になる。達筆であるのはもはや当たり前。どうしても気になるのが手の大きさ。昔の人であるのでそれほど大きな手ではない。しかし、男性特有のごつごつした手で、力強く押し付けられている。テレビ番組だったら手相占いでもするのだろうが、その知識はないので、見ほれるだけであった。

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。