国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

遺偈 清拙正澄筆 常盤山文庫

やまと絵展を見た後、東洋館へ行く。こちらの8室では創立80周年を記念した常盤山文庫の名宝展が開催されていた。前後期で入れ替えがあり、常盤山文庫の国宝・重文クラスを惜しげもなく展示していた。そして、そのすべてが撮影OK。なかなかない機会だが、見たい特別展の開催を待っていたら前期を行きそびれてしまった。

常盤山文庫について、陽明文庫のようにどこかの公家さんの子孫が受け継いだ文化財を保管していると思っていた。しかし、80周年とあるように戦時中に設立したもので、実業家の菅原通済が集めた美術品だと知る。菅原通済は山師のような投機からスタートし、関東大震災の復興特需で江の島地区を開発。戦後はフィクサー的な動きから小津安二郎のタニマチになるなど調べると面白い人物だった。

さて、常盤山文庫が謎だったのは常設の展示場がないため。戦後すぐに一般公開を始めたが、菅原通済の死去と同時期に文化財保護法の改正により公開していた場所が使えなくなり、現在に至っている。なので、コレクションは寄託先での公開がたまにあるのみとなっている。

常盤山文庫といえば墨蹟の名品が多い。所蔵する国宝2点はどちらも墨蹟。馮子振墨蹟 易元吉巻跋は前期の展示で見ることは出来なかったが、清拙正澄筆の遺偈が展示してあった。清拙正澄が死期を悟って弟子に向けて書いているが、弱弱しさはみじんも感じない。中国生まれの清拙は日本の建仁寺禅居庵で最期を迎えた。日本に禅を普及させる志を持って人生を全うする。そんな意気込みが書に乗り移っていた。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。