国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

太刀 銘筑州住左 江雪左文字 ふくやま美術館

昨年秋口から続く自館所蔵の国宝刀剣一気に見せます企画。東博永青文庫と続いて、ふくやま美術館の「名刀 江雪左文字 ―江雪斎、家康、頼宣が愛した刀の物語―」に会期終了前に行くことが出来た。これで、19口(東博)+4口(永青文庫)+9口(ふくやま美術館他)の計32口を3カ月で制覇し、刀剣類の国宝の約4分の1を見たことになる。

さて、企画展のテーマにも入っている江雪左文字は会場の中央に展示。ふくやま美術館は7口も国宝刀を所有しているにも関わらず、中心に置かれる刀は江雪左文字になることが多い。今回は大河ドラマ徳川家康にからめての企画だからなおさらだ。

江雪左文字の江雪は小田原城を本拠地とした戦国武将の北条氏(後北条)の家臣であった雪斎の愛刀で、後北条が滅びた後は秀吉に重用された。秀吉の死後は家康に仕えて、献上したことから、今回の展示会の主役となった訳だ。

刀としては筑前の刀工の初代左文字によって造られた。作刀に左と銘することから左文字と呼ばれている。短刀を得意とする刀工だが、これは太刀でかなり珍しい。柄の部分に5つの穴が空いていることから、摺り上げれた証拠でもう少し長い刀だったことが分かる。この穴が銘にかからないように空けられていることから、名刀への配慮が感じられる。穏やかな刃紋は刀の大きさと相まって大らかな雰囲気を感じる。このおおらかさが板部岡江雪斎の性格に影響を及ぼしたとすれば、後北条が戦わずして秀吉の軍門に下った時に橋渡しをした想いを重ねてしまう。

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。