国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

刀 無銘正宗(名物太郎作正宗)前田育徳会

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北陸新幹線が開業した2015年、東京から石川まで直通で2時間半となったことを記念して石川県立博物館で「加賀前田家 百万石の名宝」が開催された。前田育徳会の名品がほぼ網羅された展示会だった。そして、2020年オリンピック開催に合わせて企画されたのが、「加賀百万石文武の誉れ 〜歴史と継承〜」であった。だが、コロナで延期が決まり、オリンピックと同じく1年越しの開催となった。

最初の企画段階での規模は分からないが、今回の展示では本館1階の第7展示室、第8展示室、第9展示室の3室での展示となっていた。普段の特別展規模での開催で、テーマごとに部屋を分けての展示となっていた。最初の㈹展示室では武士の誉れと題して、刀を中心に武具や肖像画などを展示していた。

本阿弥光徳の刀絵図は刀の名物たちを写した図録で、今のように気軽に見ることができない刀たちの特徴をとらえた描き方で載せている。名家だからこそ必要な代物。昔、小金持ちの家の書斎に分厚い辞書や辞典があったのとは訳が違う。贋作を掴まされないために必要な実用書である。見たことのある国宝刀などの写しもあり、反対側に鎮座する刀たちをいますぐにでも観たい衝動に駆られるが、じっくりと絵図を拝見した。

写しを堪能した後は本物を観賞する。郷義弘作の北野江はなかなかお目に掛かれない作家の品で、稲葉江と同じ作者である。おばけか郷義弘作の刀かと言われるぐらい本物を観ることが困難な代物だが、立て続けに観ることができて大満足である。

名物太郎作正宗も余り展示がない。前田育徳会が所有する国宝は石川県立博物館でたまに展示があるが、どれがどのタイミングであるかは年間スケジュールが出てこないと分からない。今回の展示会でも何が出るかはお楽しみだったが、文武の誉れということで武の国宝は名物太郎作正宗だった。

国宝の刀としては珍しく刃こぼれがある。これは越前朝倉家と信長・家康連合軍が戦った際に、徳川家臣の水野太郎作正重が名ある侍と対峙し、この刀で兜の上から真っ向に打ち下ろして、兜の鉢を斬り割り、歯の所まで刀の刃が届き欠けたためだ。実戦で使用したことがはっきりしている国宝刀である。正宗はどちらからといえば美術的価値が高いとされ、秀吉が絶賛したことからその名声を高まった。質実整ったまさに武の誉れ的な刀である。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。