国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

天台法華宗年分縁起 伝教大師

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伝教大師最澄の遠忌1200年記念事業が進められている延暦寺。すでに東博、九博、京博で最澄天台宗のすべての開催が決定している。最澄にまつわるものや、天台宗の寺宝が3都市に分けて展示されるとあり、仏教系 展示会では令和最大級になるのは間違いない。

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楽しみで仕方がない最澄天台宗のすべてではあるが、不測の事態が不測でない世の中になりつつあり中止や延期されるおそれもなくはない。観たいものは観られるうちにということで、延暦寺の国宝殿ではたまにある国宝の展示を見に行くことにした。

国宝殿は延暦寺バスセンターから入ってすぐにある。春が終わり梅雨までの気持ちの良い季節で、青い紅葉の葉が舞い散る穏やかな時期であった。この国宝殿なのだが、重要文化財クラスの彫刻は普段から大量に展示されているのに国宝の展示はほとんどない。国宝の名に違和感があったが、遠忌を記念して展示されていた国宝の天台法華宗年分縁起の解説を読んで在野の言う国宝とは違うことを知った。

一隅を照らす。此れ則ち国宝なり。と縁起にあり、人々を照らす法具たちは国宝となるので延暦寺すべてが国宝となる。国宝殿に陳列されている物はすべて国宝なのだ。ただ、それでは国が法律で定める国宝と区別が付きにくいので、文化財区分を受け入れている。鎮護国家が仕事の一つである延暦寺ならではの寛大さ。

さて、天台法華宗年分縁起は伝教大師最澄が書いたものとされ、天台法華宗がいかに発展していったかが記されている。今回の展示では奈良仏教界に対して年間10名のみ授戒が許されていたが、天台法華宗に年間2名の正式な僧が輩出できる枠を追加し、正式に国家が認める団体となったことが書かれていた。この決定が後の仏教界に大きな影響を与えたのは間違いなく延暦寺から数々の宗教家が学び、巣立ち、考えを広めていけるのも国家仏教であったからだ。仏教界の母と言われることもある。

縁起を見ると結構早い筆捌きで書いていることが分かる。台の字のムは一筆で書いているように見え、清書というよりも思いがたぎる中で高揚した気持ちを書き記したように観えた。

 

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。