奈良国立博物館の冬の企画展は「珠玉の仏教美術」である。奈良博が展示・企画する王道は仏教関連なので、その珠玉を集めた展示なので期待が高まる。しかし、珠玉のうちの仏像館は入れ替えのため休館中。片手落ち感は否めない。
おん祭の後期展示も開催されていたが、見に来ていた人のお目当ては西新館。入り口から目に入る位置に一乗寺が誇る国宝の僧像画だった。天台宗にまつわる人物を描き、伊インド人が2名、中国人が5名、日本人が3名(最澄、円仁、聖徳太子)と10幅あるうちの前期は慧思、後期は聖徳太子となっている。できれば2021年が遠忌1400年の聖徳太子を見たかった。
慧思はのっぺりとした顔で、遠近感や立体感に乏しい人物画となっている。10幅の中では一番派手さのない僧侶である。平安時代の作品で、聖徳太子は慧思の生まれ変わりという「聖徳太子慧思託生説」が鑑真伝に記載されているそうで、後期に出品される聖徳太子の派手さはと対照的である。