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鑑真和上坐像 唐招提寺

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鑑真和上展の目玉であり、キービジュアルとなっている坐像は特別な展示方法となっていた。

1階の入り口から一番奥の独立した部屋。戒律の普及に重要な役割を果たした3名の坐像が静かに展示されていた。一人は弘法大師空海)坐像。入口から見て右に鎮座していた。日本の仏教界の巨匠は鑑真和上と同様に仏教の可能性を信じた。奈良仏教への失望や大陸から帰国した際に九州で足止めされた経験もあり、鑑真和上との共通項は多い。

そんな鑑真と空海を合わせた真言律宗という新たなジャンルを築いた叡尊こと興正菩薩坐像は左側に鎮座。普段は西大寺の愛染堂に安置されていて、季節ごとの特別公開の時に厨子が開かれていることがある。長い眉毛が特徴で生前に彫刻された(本人が観ている可能性のある)唯一の国宝坐像である。

この二人を従えるように鑑真和上坐像は中央に置かれている。聖武天皇に戒を授けた鑑真は天平時代の寵児で、像も天平文化の作風に準じた起伏を抑えた穏やかな彫刻となっている。安置状態が良い場合は昔の彩色や截金などが残っていることが多い。奈良博でみた法隆寺象の国宝・聖徳太子像はその最たる例で背中側には綺麗な彩色などがあった形跡が残っていた。しかし、鑑真は着物に朱が残るものの派手な色彩はなく、あくまでも律した鑑真を作り上げて神格化してはいない。展示会全体が落ち着いた雰囲気なのも鑑真が貫いた思想から来ていると、この像を見て初めて分かった。

3人の宗教の巨人を配しただけのシンプルさゆえに、他への目移りがなく観に来ている人の心を揺さぶる演出となっている。このレベルの三尊像ならば一部屋使っても間が持つ。独り占めできる時間帯もあり、たっぷりと楽しむことができた。6月5日から7日まで唐招提寺開山忌舎利会で、鑑真和上坐像と再会できるので一度機会を見て訪れたい。

夏の行事 | 年中行事 | 唐招提寺

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。