東博での仁和寺展で見たものと再開。天皇の直筆である宸翰で、それを手紙として出したものが消息。天皇から直接お手紙をもらったら、末代までの家宝にするだろう。にもかかわらず、ほとんど残っていない。まず、天皇自身が書くことが珍しい。明治以降の天皇の直筆も叙勲などの公式文章への署名以外はほとんど見かけない。そして、室町以前の天皇の直筆は応仁の乱の戦火で焼けてしまったことも見かけない一因だ。文字を書くこと自体が減ってきた世の中ではあるが、デジタル的に書を残すことができなければ経典の代筆のようにとてもうまいが個性のない字のみになりかねない。なにかの機会に直筆の手紙を書けば同書のように後世に残るかもしれない。
【京博名品展】法華経巻第七(運慶願経) 真正極楽寺
書や仏教の展示で経典が陳列されていることがよくある。そして、ご多分に漏れず意味も分からず、読み砕くこともできないので、ほとんどの場合は文字を眺めて終わる。その時の感想は決まって「うまい文字を書くものだな」。で、その文字は専門の職人がいることと、その方々が書いているということを数年前に知った。完璧に書いたらボーナスが支給され、失敗すると罰則金を取られるそうで、パソコンの文字入力でも間違いが多いので到底勤まらない職業である。
さて、職人は職人でもこちらのお経は仏師が奉納したもの。国宝彫刻の第一人者である運慶が奉納した日時が分かる貴重な資料で、彫刻にも自分の名前を彫るぐらい自己顕示欲が強いからこそ現代まで残るものが造れる。