
昨年春先に徳川美術館で開催されていた特別展国宝・初音の調度は見に行くことができなかった。一度に全部を見ることが出来たらさぞや絢爛豪華だったことだろう。ただ、徳川美術館では企画展の際、多数ある初音の調度品の中から少しずつピックアップして展示していることが多い。初冬の企画展である日本の神々降臨の開催期間でも初音の調度の展示があった。
初音の調度の良さは何といっても婚礼調度として最高傑作としての蒔絵の素晴らしさだ。徳川幕府三代家光の娘・千代姫が尾張徳川へ嫁ぐために作られた。戦乱の世が収まり、幕府安定期に入ったことから権威付けのために将軍家から徳川御三家の筆頭格に嫁ぐため金目に糸目をつけずに大名格に相応しいものを作った。江戸時代の庶民では絶対に見ることができない代物が現地に行って入館料さえ払えば見ることができるのは素晴らしい時代となった。
初音調度は源氏物語の初音帖および胡蝶帖を絵画的に取り込んで、立体造形物である調度品にデザインしたものである。平面的に表現せずに金工技術を用いて立体的な表現となっている。展示されていたのは初音蒔絵歯黒箱だったが、写真のように横幅が盃2つぐらい重箱である。小さな箱にすら手の込んだ細工がびっしりとされている。奉納用の箱とは違い実用性も兼ね備えているが、果たして千代姫は使用したのだろうか。