展示品で唯一、撮影がOKだった文殊菩薩坐像。西安碑林博物館から借りたもので、一級
文物(日本だと国宝相当)に指定されている。少し壊れているのが残念だが、日本の仏像とはお顔立ちが違うのが興味深い。日本の方が彫が深く、憧れを具現化したような顔になっている。一方で、写真モノのはふくよかな感じで、飛鳥時代の絵画などに見る豊穣の神的な造りになっている。
この像の奥に後期も高雄曼荼羅が掲げられている。今回は金剛界で、こちらも胎蔵界と同じぐらい傷みがあったと思われるが、修復によってとても見やすくなっていた。金泥によって描かれている曼荼羅図だが、見えにくいものの残っている部分はきらりと光るぐらいしっかりと主張している。儀式用なので、常時使われていたものではないが、経年劣化は起こり得る。1000年を超えてもまだ見ることができるだけでも満足のいく展示物であった。