備前・福岡一文字派が最盛期の頃の代表的鍛冶が吉房である。東博150周年で、同館所蔵の国宝の吉房2口が並べて展示してあった。その記憶が冷めやらぬ時期にふくやま美術館所蔵のものも見られたのは感無量である。
ふくやま美術館所蔵の則房は後世に擦り上げがされていない貴重な刀で、74cmの刀身は当時のまま。そして、黒漆の鞘もいっしょに展示しているのはありがたい。甲府藩主の徳川綱豊(のちの第6代征夷大将軍となる家宣)が元服の祝いで贈られた逸品だ。
永青文庫の刀展では鞘と一体展示はなく、刀本体と展示場所を変えて鍔など手の込んだ装飾を展示していた。刀身だけでもありがたいが、それを護る鞘があって初めて携行武器となる。単なる美術品と一線を画すための展示形式美だと考える。展示ショーケースの奥行きと飾り棚の問題があるが、いっしょに見たい組み合わせである。