聖衆来迎寺は西国三十三所の巡礼地ではないが、観音信仰の対局を表す最高峰の図であることから出品されている。
極楽浄土へと導かれるために観音様に祈願するのだが、信仰しないものは地獄へ落ちることになる。ただ、信仰しないだけで地獄へ行くわけではなく、それぞれの悪い行いによって落ちる階層が変わってくる。その段階を15幅の絵に仕上げたのが六道絵である。
地獄の苦しさ、厳しさを直接的な表現で描くことで、見ているだけで阿鼻叫喚が体験できるテーマパーク的な仕掛けとなっている。前期は人道無常相・人道苦相、後期が閻魔王庁・譬喩経所説念仏功徳の2幅ずつ、計4幅が登場。特に閻魔王庁は馴染みのあるテーマのため、六道絵と言えばこれというぐらい出品されることが多い。
さて、六道絵は負の場面ばかりであるが、天国についても描かれていたと説がある。しかし、織田信長の比叡山焼き討ちにより焼失した可能であり、現在はその痕跡すら残っていない。もしかしたら、第六天魔王の雄姿のみを後世に残す意図があったため、六道絵だけ現世に残ったのかもしれない。