東博150周年の展示会は大盛況。Ⅰ期に行ったとき以上に人があふれかえっていた。展示を見る中でボトルネックとなって混雑する場所が数か所あった。絵巻物の展示スペースはその一つであった。
後期の展示は地獄草紙と餓鬼草紙だった。奈良博にも同様のシリーズがあり、中世に描かれたものとは思えない迫力ある絵であった。地獄草紙は火焔のすさまじさに目を奪われる作品で、六道絵などに通じるこの世ならざる場所を描いている。
一方で、餓鬼草紙はこの世の風俗を描きながら、目に見えない餓鬼が人々に疫病をもたらしている風景を描く。目に見えないという点でコロナウイルスも同じで、中世の人にとって飢饉や疫病は餓鬼の仕業として納得させていたのかもしれない。
もともとは後白河法皇が蓮華王院三十三間堂宝蔵に納めた六道絵の一部と考えられている。三十三間堂に鎮座する千体の観音たちの力で様々な餓鬼の悪事を退散させるため奉納したのだろう。10枚継ぎの料紙には欲色餓鬼、伺嬰児餓鬼、羅刹餓鬼、食糞餓鬼、疾行餓鬼、曠野餓鬼、食火餓鬼、塚間餓鬼、食吐餓鬼、食水餓鬼が描かれている。観音の種類も多種多様にあるように餓鬼の悪事が細分されているのが面白い。