大倉集古館の目玉展示は普賢菩薩騎象像である。平安後期の作品で、普賢菩薩の彫刻で唯一の国宝。また、寺社以外(臼杵市が磨崖仏を管理)で国宝彫刻を所有(寄託は除く)する唯一の私的博物館でもある。
彫刻に関して宗教関係以外に国宝指定はなく、ご朱印ブームと見仏マニア増加により公開の規模が増えてきている。また、東博では毎年のように宗派の総本山展が企画され、数多くの人が来場して大盛況となっている。そのムーブメントにあって大倉集古館の改装工事を終え、普賢菩薩騎象像と会える環境ができたのは喜ばしい。
さて、普賢菩薩騎象像を観る上で目に留まるのは像である。東寺展で唯一の撮影OKだった、帝釈天薩騎象像はイケメンの帝釈天に夢中になった。象も素敵だったが、普賢菩薩のほうは被覆していた部分から露わになった樹木の年輪すらいとおしく感じる。なぜなら、彫刻師が木の節目を吟味して選び抜いた角度で仕上げているので、年輪と彫刻の仕上がりが一致している。なので、経年で変化しているにも関わらず、その減り様が形通りに劣化している。そのため、彫り部分は年輪に沿った形で削げ落ち、自然体のに彫り進められている。日本庭園や盆栽などの時間経過を計算して作られた美に似ている。現代技術を持ってして、彫刻でここまで計算して作ることができるのだろうか。旧人の技術力、恐るべし。