密教特有の明王である孔雀明王。孔雀が毒虫や毒蛇を食らうことから、邪を払う象徴として明王の眷属となった。日本にも596年に新羅より輸入した記述が残っており、貴族のペットとして重宝されていたようだ。
普段見る明王たちが厳つい感じで描かれることが多いが、孔雀明王はけばけばしいほど派手。とにかく孔雀の豪華な羽根が目を引く。そして、それに負けず劣らず明王自身も派手な装飾を身につけて描かれている。差し詰め邪気を払う光り輝く正義の味方と言ったところだろう。
仁和寺の孔雀明王像も派手な仕上がりで、儀式などで使ってはいるものの、レアアイテムとして使用頻度は少なかったことと大切に保管されてきたため、それほど損傷がない。正面を向いた平面的な図ではあるが、羽根などが紙面いっぱいに広がっており力強さを感じる。
さて、印象に残る孔雀の絵は円山応挙作なのだが、その孔雀に乗った明王がいるならばその美しさは想像を超えるだろう。近代絵画技法での孔雀明王も見てみたい。