仁和寺は霊宝館で夏の特別展を開催している。「法親王が誓った 国宝孔雀明王」と題した展示会は国宝の孔雀明王図が出ていると期待していた。しかし、薬師如来坐像がお出ましになっている期間には展示がなく、残念であった。しかし、今回の展示は国宝以外の孔雀明王図が数点展示されていたので、毒を食らう孔雀明王のご利益は頂けたはずだ。
仁和寺の寺宝には神頼みの以外にも国宝の医学書が残っている。医心方は東博も所有する国宝で、平安時代に宮中医官を務めた鍼博士・丹波康頼が撰した、日本に現存する最古の医学書とされる。健康は古今東西、誰しもが気にする。ましてや天皇家についてはまつりごとをする上で最も重要なこととされる。御室と呼ばれる仁和寺ではその健康管理について、心身ともに収集されてきたものが寺宝となっている。拝観者に配られていた覆面(マスク)はまさに古くて新しい健康管理グッツである。平安時代の人々も科学的ではないまでも、病は気からでその出入り口を塞ぐことが効果的だと体感的に理解して普及していたのだろう。