正倉院展に合わせて法隆寺宝物館では聖徳太子絵伝を展示していた。絵伝は壁面ぐらいの大きさに各場面を混ぜ込んで描いている。ちょうど日本の絵巻物の時間軸を平面に展開したような形である。
10面で聖徳太子の人生すべてを描いているので、生青壮老死のハイライトを1面毎に描いている。国宝で近い描き方は六道絵のように、1面で伝えたい場面をいっぱい書いて、それを枚数を重ねることで場面転換(空間転移や時間転換)に仕上げている。
聖徳太子信仰の名品ではあるものの、傷みがあり美術的にはもう一つに思えた。聖武天皇以前の物はそれほど残っておらず、聖徳太子も実在論まで出てきている昨今。摂政である厩戸皇子の活躍をフィクションも織り交ぜて描かれた初期の作品であることは貴重である。
今回は正倉院展を記念してか、8kで撮影したものをデジタル的に鑑賞できるサービスがあった。本物ではじっくり観ることに限界があるので、複製やデジタル保存など鑑賞の仕方が増える取り組みは大賛成。文化財の保護の観点でも本物を超える贋物ならいろいろな企画展示ができそうだ。