今年の梅雨時に六本木・サントリーミュージアムで開催されていた展示会で大量の蒔絵手箱を観た。その中でも同ミュージアム所有の浮線綾螺鈿蒔絵手箱は単体でショーアップされた展示がなされており、修繕を終えた姫が帰還したぐらいの風格があった。
古美術ばかりの展示が多い中、昔のものは失われたが図面の残っているものを復刻した手箱も陳列されていた。新品なので輝きは美術品よりもあり、いくらぐらい出せばこの玉手箱が手に入るのだろうと思った。
さて、国宝展に出品されている梅蒔絵手箱の輝きは千代姫用の婚礼調度品のほうがある。ただ、デザイン性は断然、梅蒔絵のほうがよい。内容物の化粧道具がほぼすべて揃っているので、これを使って化粧した北条政子が源頼朝の心を射抜いたと思うと、刀剣類に匹敵する武具を観ている気分だ。