国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

油滴天目茶碗 東洋陶磁美術館

大阪市立東洋陶磁美術館は約2年のリニューアル工事を終えて、今春再開した。その最初の展示会はシン・東洋陶磁―MOCOコレクション。東洋陶磁美術館が保有する珠玉の陶磁たちが並ぶ展示会となっている。工事中は台湾→東京→九州と行脚していたコレクションが終の棲家へ舞い戻って公開される。

とは言うものの、リニューアル工事前の最後の展示会でもコレクションを惜しげもなく展示していた。果たしてなにがシンなのかを考えながら見て回った。

まず、以前の東洋陶磁美術館と大きく変わったのは出入口。それまであった出入り口前、中之島公会堂との間にあった何もなかった広い空間を埋めるように建て増ししていた。建物はガラス張りで増築していてチケット受付とカフェを設置していた。外に開かれたガラス張りの壁面は中之島中央公会堂が正面に現れる借景とし、2階へはらせん階段にすることで広々とした空間を演出していた。ただ、この演出が大阪の夏の暑さにミスマッチで空調の効きが非常に悪く、サーキュレーションを所々に配置して空気の流れを変えていたのが残念であった。

2階に上がって、展示室が見えるといつもの風景が現れる。これまであった東洋陶磁美術館の空間はそのままで、鼻煙壺室には油滴天目のバーチャルで体験できる機器以外はそのままのようだった。メインが並ぶ第1展示室を見て、ロビー1へと移動する。

このロビー1に国宝の油滴天目茶碗がぽつんと展示されていた。まるで東博の国宝室のような雰囲気で、1点豪華主義な空間となっていた。1点だけの展示ということで独立したショーケースで360度どこからでも見ることが出来る。静嘉堂@丸の内の稲葉天目茶碗を思い出す展示の仕方であった。東洋陶磁美術館の油滴天目茶碗は斑点が非常にはっきりしていて、光の角度できらきらする。ただ、輝きよりも雨粒のような油滴の美しさを楽しめた。導線的には帰りにも寄ることができるため、最高の配置となっている。ただ、空間が広いためかあまり長々と見ている人はいなかった。小さな茶碗なので、椅子を置いてゆっくりと離れて鑑賞するという代物でもなく、滞留させるのには難しい。

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。