響きあう曜変天目。
国宝の曜変天目は公開がどこかであれば、それに呼応して別の曜変天目も展示されることが多い。
今年4月に藤田美術館がリニューアルオープンしたことを記念して、曜変天目が公開された。この秋には京都国立博物館で開催中の茶の湯展で龍光院の曜変天目が2週間だけ公開された。そして、静嘉堂文庫が所有する曜変天目(通称:稲葉天目)も丸の内で公開された。
2017年に龍光院の曜変天目が久々に展示され、同年に3点が公開された際は歴史的なグランドクロスが起こったと思った。つづく、2019年には3点公開を記念して、3つを並べたクリアファイルが発売され、つい購入してしまった。そして、今回。もはや響きあうのが必然なくらいにまで思えてきた。
この曜変天目が展示されていたのは第4室で、第3室から続く部屋だ。この第4室は行き止まりで、出入口が第3室としかない。第4室にはテーマから漏れた国宝などが並んでおり、太刀銘包永や趙孟頫筆の与中峰明本尺牘があった。その中で、独立したショーケースに入っているのが曜変天目で、国宝でも別格扱いだった。稲葉天目の特徴は圧倒的なまでの青色の輝き。輝く変化と言うよりも黒と釉薬の下から青色が覗くといった印象だ。国宝の曜変天目の中では一番青色がしっかり出ている。
静嘉堂@丸の内に展示を移した静嘉堂文庫美術館。全体として世田谷にあった時よりも展示スペースは狭くなっていた。ただ、初回の記念展だったので、真ん中のホワイエ(休憩場所)への展示物配置は目立たない位置に4点ほどとなっていたので、このスペースでも展示されると結構な数を展示できる。むしろ交通の便がよい場所に会場ができたのはありがたく、近くには東京ステーションギャラリー、三菱1号館、出光美術館、アーティゾン美術館、まだ行ったことがない丸紅美術館など、芸術を楽しむ施設が集結している。それぞれ毛色の違い企画展を行っているので、芸術の聖地が上野駅から東京駅に変わる日も近いかもしれない。