京の国宝展のメインビジュアルを飾るのが東寺の梵天坐像。1階の彫刻が置かれている部屋には、いつもの安祥寺の五智如来坐像が中央にあり、その脇に大きな彫刻、ショーケースに入る小さな彫刻は正面に配置している。
東寺の彫刻と言えば兜跋毘沙門天が門外にお出ましすることが多いが、今回は梵天坐像となっている。いつもは東寺講堂に鎮座している梵天は帝釈天と対に配置されている。この帝釈天はイケメンとして、東博で開催された東寺展では唯一撮影OKの彫刻として人気を博していた。かたや梵天はというと、仏像らしい穏やかな表情で、願いを聞いてくれそうな雰囲気が漂う。東寺の国宝・重文の彫刻群はどれも一級品で目移りするため、梵天まで目が届かないことが多い。今回の展示でじっくり拝見した。
梵天は四面(3面と頭に1面)四臂で4羽の鵞鳥の上に座っている。千手観音や十一面観音など数で圧倒する彫刻に比べると柔和な造りで、決して目立つ彫刻とはなっていない。背面からは観ることができなかたが、梵天から蓮の台座、動きのある鳥の彫刻まで丁寧に造られ、まるで人々を導く一場面を切り取ったように見える。弘法大師か唐から持ち帰った図像集通りに彫られていることから1200年前の空海の理想郷が表現されていると言える。