国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

太刀 銘国宗 照國神社

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国宝は日本国内にあって初めて指定される。どれだけすばらしいものでも海外に流出しているものは対象外である。そのため、海外から輸入されたもの(茶器や絵画など)が国宝に指定される例は多いが、海外に渡ったものが指定されるのは珍しい。

照國神社が所有する太刀・銘国宗は歴史を含めて国宝なるべくしてなったものだ。そもそも、古くから薩摩を治めている島津家が所有し、昭和2年照國神社へ奉納したもので、旧法律下で国宝指定を受けていた。順風満帆であった国宗の運命の歯車が狂いだしたのは戦争によってである。

第二次大戦に敗れた日本は米軍に武器を没収された。特に刀類は日本軍の象徴として名に彼構わず接収された。一兵卒の軍刀だろうが、家宝の刀だろうが、国宝であろうと武器として取り上げられた。その中に国宗も含まれていたのだった。アメリカ軍は刀の価値など全く興味がなく、戦利品の手土産としてアメリカ本土まで持ち帰った。そのため、名刀で名を馳せたものでも行方不明のものが多く、国宗もそのひとつになりかけた。しかし、運命はそうさせなかった。オークションにかけられたところをアメリカ人の愛刀家コンブトン氏が入手する。その価値を知る彼は昭和38年、日本に返却してくれたのだ。国宗は無事、日本に帰還することができ、晴れて国宝してを受けた。

さて、返還されてからは東京国立博物館が所有していたが、やはり本来あるべき場所は鹿児島。同県の文化財で唯一の国宝として、鶴丸城跡にある黎明館で時折展示されている。

そんな国宗だが、刀としてどうかと言われると、武骨な刀で工芸美術品というより実践向きに見える。保存状態はそれほどよいとは言えず、大切に保管されていた重文クラスのほうが輝きがある。何と言っても刀の運命で見せるタイプの刀なのだろう。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。