国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

薬師如来立像 元興寺

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奈良国立博物館の旧館は仏像館として彫刻の数々が展示されている。半分以上は同じものが並んでいるが、調査や修繕が終わったものを入れ替える形で展示が変わっている。

元興寺薬師如来立像は年末から登場した国宝彫刻である。お笑いトム・ブラウンのボケ、坊主のみちおのような細目丸顔で、東大寺の試みの仏像ほどの個性はないが、やさしそうなお顔立ちである。大人ぐらいの大きさの立像で、なら仏像館の中央大広間にむき出しで展示している。奈良博に寄託されている仏像ではあるが、久しぶりの登場となっている。国宝彫刻保有数で国内屈指の興福寺東大寺の近くにあるためか、奈良博の仏像は少し見劣りする。しかし、国宝彫刻を一つないし二つは見ることが出来ように工夫して展示しているので、国宝好き必見の場所となっている。また、国宝にはなりえないが奈良博の展示物には博物館として光の当たりにくい壊れてしまった彫刻の展示がある。博物館の使命に基づく展示も重要な学習材料だが、それらの展示物の陳列も定期的に大幅に変えてほしい。

太刀 行平

永青文庫は国宝8点、重要文化財32点を保有する大名家の名品所蔵美術館である。肥後・細川家の所有物を中心に、年4回展示会を開催している。結構エッジの利いた展示会も開催していて、春画展は一大センセッションを引き起こした。

2020年秋展では、新たなインパクトを与える展示を企画。永青文庫名品展 〜没後50年 “美術の殿様” 細川護立コレクション〜がそれで、国宝、重文の宝庫である永青文庫の名品を余すことなく観ることができるまたとない機会になりそうだ。ぜひ、細川家の武家としての名品たちに出会いたい。

レア ★★☆

観たい ★☆☆

http://www.eiseibunko.com/index.html

令和の国宝を振り返りつつ展望する

元号の変更により新時代となった日本。日常が極端に変わったことはないはずだが、それなりに心機一転した年だった。

さて、国宝を観る的には大豊作の年であった。令和の引用元とされる万葉集を中心に、派生した国宝の日本書紀の展示、漢籍から引用されると予想していたため展示に至ったものなど書跡類は華やかな展示が多かった。御代替わりと平成30年記念を兼ねた御物展は御物と国宝物のコラボ企画が最高に良かった。

寺宝関連の展示会も盛大で、東寺展は見仏マニアたちが大挙して訪れた。顔真卿展も日本国内にある書跡にもスポットライトを当てた展示となっていて、大陸と日本の結びつきが良く分かった。京都ではICOMの大会開催に合わせた特別企画展を実施。普段はそれほど国宝展示に積極的でない京都界隈の美術館が協力して非常に魅力的な展示となっていた。

さて、2020年はオリンピックイヤーで、オリンピック憲章には文化的な企画を実行する項目があり、団十郎襲名はその一環であるとのこと。美術館や博物館でも国宝を中心とした特別企画実施の発表が相次いでおり、夏場の首都圏の混雑は必至だろう。

曜変天目茶碗 静嘉堂文庫

明治維新後、国家のため事業活動に邁進してきた三菱財閥。三井や住友に比べて歴史がないためか、文化財では一級品を集めている。戦後になって、三菱の美術品は各テーマ別に振り分けられて美術館に納まっている。

三菱創業150周年記念 三菱の至宝展はこれまで三菱一号館美術館静嘉堂文庫、東洋文庫にバラバラに展示していた名品を都内一等地の丸の内で観ることが展示会を開催する。

その目玉は曜変天目。ここ数年は定期的に展示されているが、外部で観ることができるのは珍しい。この他、国宝12点が展示されるとの情報があり、三菱国宝展は必見の展示会となっている。

レア ★☆☆

観たい ★★☆

https://mimt.jp/

那智滝図

オリンピックが終わった2020年11月、根津美術館の国宝・重要文化財が行われる。財団設立80周年記念の展示会で、国宝7件、重要文化財87件を保有する国内屈指の美術館の国宝重文展は期待の高い展示会だ。

すでに那智滝図の展示が発表されているが、それ以外のあまり展示のない国宝墨書の展示も期待したい。

レア ★★★

観たい ★★★

http://www.nezu-muse.or.jp/index.html

太刀 安綱 号童子切

f:id:kokuhou:20191229083053j:plain奈良・春日大社の国宝殿で今日から開催している安綱・古伯耆展は大混雑で幕を開けた。
初日なので、狐キャラクターのこんのすけが登場していたこともあり、普段の国宝殿には見られない刀剣女子が大挙して来ていた。まず、行列が出来ることがない展示会場で、年末の閑散時期のはずがここだけ賑わっていた。本殿の春日大社以上の賑わいがあることなどそうそうない出来事だ。
さて、展示は2017年に見つかった国内最古級の伯耆の奉納刀を中心に国宝の伯耆刀剣を含む展示となっている。伯耆は今の鳥取中西部で倉吉や米子が含まれる地域だ。出雲地域に隣接していることから古代から文化度が高い場所となっている。また、たたら製法による鉄の加工技術が確立された場所なので、平安期に刀生産地であったのだろう。
平安末期以降、各地で武士が活躍するようになり、生産地も南下し各地に点在するようになった。そして次第に伯耆刀の需要がなくなったのか、鎌倉時代より名刀を生み出すことは少なくなった。
さて、平安期の刀は大陸風の直刀から日本刀独自の反りなどを確立する過渡期であった。安綱は反りを実装化したと言われる刀工で日本刀の祖と言ってもよい。童子切酒呑童子という妖怪を切った伝説があり、加えて源氏の棟梁たちが愛した刀である。天下五剣に列していて、鎌倉以降の天下人に愛された最高峰の刀である。
さて、安綱は太刀なので長いが大包平程の長さはない。丁寧に保管され続けたことが分かる美しさがあった。ただ、美術的な美しさよりも実用的な形状美があり、一度振り下ろしてみたくなるかっこよさがあった。

熊野御幸記 藤原定家筆 三井記念美術館

www.mitsui-museum.jp

2020年7月から8月のオリンピック期間中、三井記念記念館の名品が出尽くす「三井家が伝えた名品・優品」が開催される。8月に開催される第2部「日本の古美術」には国宝が登場すると予想。

その候補筆頭は熊野御幸記。世界最古の直筆日記である明月記の作者である藤原定家後鳥羽上皇といっしょに熊野詣をした23日間を記録した書物だ。

 

レア★★☆

観たい★☆☆

 

 

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。