国宝の指定はほぼすべて重要文化財の中から選択される。重要文化財は国の大切な財産で、数多く指定を受けているので、その中から選ぶのが最も効率的であるためである。しかし、重要文化財でないにも関わらず国宝指定を受けたものがある。正確に言えば、重要文化財指定と国宝指定が同時になされたものがある。それが正倉院である。
文化財保護の関係で、国内の文化財は基本的に指定対象になる。しかし、例外があり、所有者が調査を含めて拒むことと、宮内庁所有(いわゆる御物)がそれにあたる。正倉院は宮内省管轄の物件であるので、これまで指定されて来なかった。ところが、ユネスコの世界遺産の指定を受けるためにはその国の法律に基づいて文化財が保護されていなければならないことから、正倉院は国宝指定を受けて、1998年に古都奈良の文化財としてユネスコの世界遺産となった。国際基準が宮内省を動かし、重文と国宝同時指定を実現させた。