宗像大社は福岡県宗像市にある神社。御神体は沖ノ島で、島では現在でも女人禁制、禊や一木一草一石たりとも持ち出し禁止となっている。
古くから海上・交通安全の神として信仰されている。そのため、島では連綿と祭祀が行われてきたが、立ち入りが制限されていたり、持ち出しが厳禁だったことが幸いし、古墳時代から平安時代にかけての古代祭祀遺構や装飾品などの大量の祭祀遺物が残っていた。発掘調査が行われた結果、約8万点に及ぶ遺物が一括で国宝指定を受け、数量で日本一となった。これら孤島から発掘されたことを受けて、沖ノ島は俗に海の正倉院と呼ばれている。
さて、宗像神社と関わりの深い美術収集家として出光佐三がいる。言わずもがな、佐三は出光興産の創業者にして、出光美術館の設立者である。佐三は旧宗像郡赤間宿の出身で、宗像神社を崇敬していた。事業で成功した後に、神社が荒廃しているのを憂いて、修復のための寄進を行った。ただ、名を残すのは恐れ多いと境内にはそれを示すものは残さなかった。いまは神宝館などに佐三を顕彰する展示があるが、滅私奉公を体現するエピソードである。