国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

群書治要

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631年に中国の唐の太宗皇帝が命じて編纂した政治のための参考書。経書や晋代までの正史、その他の古来の群書から、政治上の要項を抜き出して配列している。ただ中国本土には残っておらず、平安時代に写した最古のものが日本で国宝となっている。

九条家に伝わった群書治要は貴族趣味バリバリの仕上がり。特徴は紙。色とりどりの紙を継いだもので、単調な漢字ばかりの巻物が一変する作りになっている。その紙に金泥で枠線を引いて豪華さを出し、達筆な文字が並ぶ。現代なら革張りのハードカバーで総天然色で作られた書物といったところ。豪華に作ることで大切に保管され続けたのだろう。

文選集注

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動産の国宝は各地で開催される展示会に出品されることがある。しかし、東洋文庫ミュージアムは貸出しているのを観たことがない。その代わりに、各企画展に1つ展示してくれるので、毎回チェックが必要。今回は北斎をテーマにした展示なのだが、国宝の文選集注が展示してあった。

文選とは詩や文章を集めたもので、中国古代の名文たちを網羅した書籍。その書籍を開設したものが集注となる。中国の教養人のための虎の巻で、科挙などの試験用のテキストといったところだ。本国の中国には残っていないそうで、東洋文庫称名寺に残っているもののみ。大陸に学ぶ日本ならではの国宝である。

木造無著・世親立像 興福寺

南円堂の特別公開に合わせて北円堂も同時公開していたので、合わせて拝観した。
運慶展で多くのファンを獲得したからか、堂内は熱心に観る人が多かった。望遠鏡や単眼鏡などでじっくり観る人もチラホラおり、参拝というよりは美術鑑賞の様相を呈していた。
さて、仏像は相変わらず国内最高峰の出来を保っていて、何時までも眺めていたくなる。筋肉隆々が多い運慶の作品にあって無著と世親はおじいちゃんなので表情で勝負している。リアルな顔に玉眼がキラリと光り、生きていてもおかしくない。今にも動き出しそうなぐらいだ。南円堂に比べて公開頻度が多い北円堂だが、何度観ても見飽きない。

木造弥勒仏座像 東大寺

東大寺ミュージアムの絶対的エースである誕生釈迦仏立像が大英博物館での展示で不在となっている。その合間を縫って展示されているのが、東大寺の裏番長、木造弥勒仏座像だ。
横長の顔に切れ長の目、立憲民主の枝野幸男を超える福耳が相まって、忘れがたい独特のフェイスを構築している。ずんぐりむっくりとした仏様は豊穣を期待せずにはいられない愛くるしさがある。
写真でしか観たことがなかったので、小さい部類の誕生釈迦仏立像が飾られているショーケースで納まる大きさたとはおもわなかった。東大寺は南大門の仁王像と盧遮那仏の大きさに圧巻されて記憶力がそこで止まってしまう。だが、何度もいくと法華堂や灌頂堂の国宝物群や和尚さん、普通サイズの仏像など、見所いっぱい。さすが元国立寺院の最高峰だっただかけある。

三十六家集 本願寺

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室町から明治にかけて巻物も褒美のひとつとなり、名品たちが断簡にされて名門家の家宝に仕立て上げられた。書のなかには手鏡としてそれらを収集して一冊の本に仕上げたものもある。ただ、多くは切断された単品を茶室サイズ(床の間に飾る)に合わせ、掛け軸にしている。茶室という狭い空間で印象を残すためには、随所に目利きたちを唸らせる演出が必要で、掛け軸はその中でも高級感を出す分かりやすいアイテムとなる。

佐竹家から流出した三十六歌仙絵巻が断簡された。この時期は、第一次世界大戦後の不況時期であった。巻物状態では相当な金額になるので買い手が見つけにくかった。そこで財界での茶道ムーブメントもあり、掛け軸することで購入者が容易に見つかった。また、財界人たちの手が届く(といっても相当な金額)範囲まで販売価格を下げることができた。その一方で断簡されて以降、36歌仙(+1)たちはすべてが揃うことはなく、一部では行方不明扱いになっていたものさえあった。今回、同展示では31作品が集結。流浪の果てに京都で集結した奇跡の展示。次回は果たしてあるのだろうか。

さて、そんな奇跡を記念して、本願寺から国宝・三十六家集が出品。絵は描かれていないが、三十六歌を色とりどりの紙を継ぎ接ぎして綺麗に仕上げた台紙に書いている。その台紙の色継ぎ方法がみごとで、こんな紙があれば欲しいと一瞬で思えるぐらい芸術性が高い。そこに、歌が流れるように書いていて、台紙の芸術性を邪魔しないみごとな配置となっている。紙が貴重な時代に、嗜好を凝らして歌を読むだけの簡素なものではない、創造性を広げる最高の演出がなされた本となっている。

五部心観 三井寺

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開祖・円珍が唐への留学中の855 年に,青竜寺の法全 から授けられたインド伝来の世界最古の金剛界曼荼羅。色着いていない墨の線だけで描かれた白描図像で、曼荼羅の図解本、いわば虎の巻である。

比叡山(山門派)が修行場のパラダイスであるに対して、園城寺三井寺)を総本山とする寺門派は修験道と融合した自然相手の修行スタイル。鍛え上げた修行僧の証を授けることが出来たのも、三井寺に虎の巻があったからこそかもしれない。天皇家の産湯としての聖地に加えて、中国では一番高貴な色である黄の不動を本尊にして格式高い灌頂場となっている。

この五部心観は境内で一般公開されるのが初めてだそう。三井寺文化財収蔵庫は勧学院の襖を現状保存している関係で、展示スペースが限られている。たくさんの国宝クラスのお宝もなかなかお目にかかることがない。客殿での虫干しを開催してもおもしろいかもしれない。

光浄院客殿 三井寺

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勧学院の特別公開見学の後、光浄院客殿の工事現場見学へ行く。屋根の葺き替え工事中でこのタイミングでないと屋根を間近で見ることはできない。

勧学院同様こちらも客殿ということでホテルになる。寝殿造と書院造の特長を併せ持つハイブリッドホテル。それぞれの特長を生かすため、屋根の形状は複雑になっている。そのため屋根に曲線が多く葺き替え技術を要する。均一かつ丁寧に重ね合わせ、角の曲線部分は扇状にした板を敷くなど工夫することで、美しさを生み出していた。数十年に1度は葺き替えないと屋根自体が傷むそうで、今回の葺き替え前の調査ではどこも傷んでいなかった。前回の葺き替え職人が丁寧に仕事をした結果だろう。

今回は工事中なので中の見学はできなかった。今年中には葺き替えが終わるそうで、来年の春先には勧学院のように特別公開されることを祈る。

国宝は2017年10月3日~11月26日が会期で無事終了した。 この展示会に出ていない800件以上の品々も見ていきたい。