国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

【日本国宝展】四季山水図巻 (山水長巻) 雪舟筆 毛利博物館

大阪市立美術館で開催されていた日本国宝展の余韻を味わう振り返り最後とする。

リニューアルしたての大阪市立美術館での展示は大満足の環境だった。ショーケースは見やすく、明かりも申し分ない。建物の構造的な問題でメインの部屋で天井が引いことが残念な部分だった。

ほぼ大入りの展示会だけに日々の運用で改善もあった。雪舟の山水長巻は4期で訪れた時は左右から展示を見る人が来て少し混乱していた。6期では規制線を張って導線を一方通行で確保したことで、非常に見やすい展示になっていた。東博鳥獣戯画展で導入した動く歩道とまではいかないが、人が多く入る展示会では人気の展示物前をスムーズに移動させるかが混雑解消のカギとなる。しかし、相変わらず雪舟作品は人気であったが、昨年の京博で開催された雪舟伝説でももっとじっくり見ることができたので、一見の来客が多かったのだろう。

奈良・京都・大阪で万博開催記念の古美術展示会を開催し、どれも多くの人が来場していた。お笑い以外は文化不毛の地とされる関西において、引き続き芸術展が賑わうことで東京一極集中のメジャー企画展を巡回したくなる地へと変貌させてほしい。

【九州の国宝】西都原古墳出土金銅製馬具 五島美術館

宮崎県内の団体が所有している国宝は今のところない(全く国宝がない県は他に徳島県がある)。ただ、宮崎県で発見された国宝はある。西都原古墳から出土した金銅製の馬具である。藤ノ木古墳の出土品で似たような品で、古代の乗馬のトレンド品だったのかもしれない。この西都原古墳出土金銅製馬具は東急のオーナーだった五島慶太の手に渡り、五島美術館の所蔵となっている。五島と宮崎県につながりがあるかと調べても生まれは長野県で進学のため上京後は、英語教師として三重へ赴任した以外は関東で活躍。宮崎県とのつながりは不明だった。美術コレクターとしての縁のみが同館所蔵につながったのだろう。

通期

レア ★★☆
観たい ★☆☆
コラボ ★☆☆

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【九州の国宝】蒙古襲来絵詞 三の丸尚蔵館

九州で起こった歴史的な事件を描いた最も有名なものは蒙古襲来絵詞だ。歴史の教科書の鎌倉時代編で扱われる元寇の様子を描いた絵として必ず掲載されている。長年、御物として文化財指定を受けていたかったので公開される機会が少なかったが、国宝指定を受けてからは大型展示会への出品されている。初めて見た時は歴史が目の前にあるという感動を味わえた。金印クラスの集客力があると個人的には思っている。

期間:7/5-8/3

レア ★☆☆
観たい ★★☆
コラボ ★☆☆

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海獣葡萄鏡(法隆寺献納物) 東京国立博物館

東博本館に行ったついでに法隆寺宝物館を訪れた。

お目当ては今年国宝指定を受けた伎楽面。貸し出しされていないものが1室に展示され、爽快な空間となっている。はずだったが、あまりにも久々の宝物館訪問でこの1室の開館曜日は金・土のみであることをうっかり忘れていた。訪れた日は閉室していた。残念ではあるが仕方がないので、その他の法隆寺献納物を堪能することにした。関西の国宝祭りに負けず劣らずのラインナップで、同館はずっと国宝・重文祭りとなっている。法隆寺の寺宝のポテンシャルの高さが圧倒的なことが分かる。古さの物量から言えば御物でも太刀打ちできない。代り映えはあまりしないが、たまには訪れたい。

【九州の国宝】催馬楽譜 公益財団法人鍋島報效会

佐賀県唯一の国宝が楽譜である。催馬楽を演奏するための譜面となっている。歌詞と旋律や拍子などが書かれている書物では日本最古のもの。鍋島家に伝来した品々を展示・紹介している徴古館でもほとんど公開されることがないので、今回の展示は貴重な機会となる。

通期

レア ★★★
観たい ★★★
コラボ ★☆☆

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【九州の国宝】誓願寺盂蘭盆縁起 栄西 誓願寺

大陸に近い九州は海外への渡航、そして帰国の玄関口となっている。空海は大陸から経典など多くものを持ち帰ったが、元来の渡航予定年数より早く戻り過ぎたため、九州へ留め置かれ、その間に福岡の東長寺を開基したり、観世音寺に身を寄せたり、鎮国寺を創建したりした。臨済宗の僧である栄西もまた宋から戻ってから九州で一時滞在した。その間、日本初の禅寺である聖福寺を建立している。栄西の自筆の書も残っている。筑前国今津誓願寺盂蘭盆のため法華経を書写勧進したものが国宝になっている。数々の国宝が九州にあるのも大陸に近い場所に位置していることも関係している。

期間:8/5-8/31

レア ★★☆
観たい ★★☆
コラボ ★☆☆

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【日本国宝展】毛詩鄭箋残巻 大念佛寺

2025年のおねり風景

 

大阪・関西万博開催を記念して企画された日本国宝展。開催地の大阪の美術館で行われたこともあり、おおさかの国宝をテーマにした章があった。大阪に縁があるものはもちろん、現在の所蔵者が大阪であるものも多数紹介していた。その中で、必ず見ておきたい国宝があった。大念佛寺の毛詩鄭箋残巻である。
大念佛寺は融通念仏、念仏を唱えることで万物が救われるという考えの寺院の総本山で大阪市の南部の平野区にある寺院である。このお寺で有名なのは毎年5月のゴールデンウィーク頃に行う万部おねりである。本堂の周りに足場を組んで、菩薩の仮面をかぶった二十五菩薩が練り歩く姿は独特で、類似として當麻寺のお練り供養などがある。今年の大念佛寺の万部おねりは本堂が改装工事中につき、足場を組むことなく地上で小規模なものとなっていた。ここのおねりの良いところは開催が1日限定ではなく複数日開催されることだ。あまりないが雨などが降って屋外開催ができないときでも複数日開催するため翌日に行けば見ることができる。本堂の改修工事が終わった暁には大々的なお練り供養が行われるだろうから、必ず見に行きたい。
万部おねりは何度か見に行ったことがある。目的はおねりを見ることが一番だが、その他に境内で寺宝の公開があるためだ。大念佛寺が所蔵する国宝・毛詩鄭箋残巻はほとんど公開されない。もしかしたら寺の最大行事である万部おねり開催のタイミングで公開されていないかという淡い期待を抱いて訪れたが、いずれも展示されていなかった。そのため、今回の日本国宝展で公開されるとあって必ず見ておきたい国宝のひとつであった。
毛詩は四書五経五経の一つである詩経のことで、難しい詩経に注釈をつけたものが複数誕生したが、民間の毛氏学派がつけたものだけが完全に伝わっていることから毛詩と区分された。それに補注を後漢の鄭玄(三国志の主役のひとりである劉備の若い頃に政治について教えた人物)が加えたので毛詩鄭箋と呼ばれている。
大念佛寺所蔵の毛詩鄭箋は残巻で菅原道真筆が書き写されたものと言われているが定かではない。残巻で残っているのが風・雅・頌の三部のうち風の一部がで、平安時代中期かそれ以前の天平風の文字で写され、送り仮名などを付けた古鈔本である。見ていると教科書を読んでいるみたいになる。
国宝指定を受けている毛詩は複数あり、東洋文庫に第六残巻、宋版毛詩正義(宋時代の印刷版)は武田科学振興財団(杏雨書屋)が所有している。

国宝拝観者たちの夢、千件越えをいつの間にか達成した。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標が完結した。 次の1100件は果てしなく遠いので、1050件を一区切りにしよう。