国宝を観る

国の宝を観賞していくサイト

国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

【MAO】紅白梅図屏風 尾形光琳

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MAO美術館の国宝3点一挙公開の目玉は紅白梅図屏風である。左に白梅、右に紅梅を配して、屏風の中央に川が流れる表現を金をうまく使って表現している。川の流れは雄大にも関わらず、梅の枝葉が鋭利に躍動しているので早さを感じる。梅が咲き、春になる速さが梅に現れているのかもしれない。

さて、左右の梅の木の躍動感がなんとなく俵屋宗達風神雷神図屏風に重なる。後世の評論家が琳派という名称で分類したことで、そう思わせるのかもしれない。現在のように展示機会さえあれば誰もすぐにそれらを観ることができる環境は評論家以外の一般人でも同じ思いを持たせる幸せな時代かもしれない。

 

【顔真卿】説文木部残巻 

王羲之を越えたと喧伝している顔真卿展。中華圏の国宝中の国宝である祭姪文稿が来日しているとあって、注目度では王羲之展を越えたかもしれない。とくに祭姪文稿を見るための行列は直筆の王羲之の書(存在が確認されていないそうだ)が見つからなければ超えられない待ち時間かもしれない。

さて、海外から展示のため来日した名書に引けを取らない書が国内からも出品。武田科学振興財団・杏雨書屋所有の説文木部残巻は入り口すぐにあり、漢字について解説した字典的な巻物。以前は周年節目に道修町にある杏雨書屋での本物展示があったが、最近は複製品のみでなかなか見ることができない。入り口にあるので列が出来てしまうのでじっくり見ることが難しかったが、他の書に比べると読みやすい。国宝の書の展示は期間が保護の関係で限られる。展示会期間中は常設なのはうれしい配慮だが、これで当分お目にかかれないのだろう。

【MAO美術館】色絵藤花文茶壺 野々村仁清

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熱海にあるMAO美術館は3年前にリニューアルして以来、冬の時期に所有する国宝3点を一度に見せる展示会を開催している。

熱海駅からバスで数分。山道を登った海が望める見晴らしの良い場所に美術館はある。バス停入口からはエスカレーターを乗り継ぐ必要があるぐらい山肌に建てられている。その分、海への眺望は遮るものが無く、登ってきた(エスカレーターなので楽ちん)甲斐がある。

直接、美術館へ行くルートもあるが、途中で外に出られるエントランスがある。そこから見える美術館の外装は砂漠の中にある石造りの神殿のように美しく、巨大なガラス部分から多くの人が風景を堪能している様子がうかがえる。

さて、国宝の1点目は常設の野々村仁清作、色絵藤花文茶壺。国宝の陶器は数が少ないうえ、国産となると5点しかない。そのうち2点が仁清の作品で、もう一つはこちらも常設で石川県立美術館にある色絵雉香炉だ。

輸入物の国宝陶器は希少性に重きを置かれているようだし、国産の国宝茶器は表現力が評価されているように思える。仁清の作品の雉は何となく陶器なのに動きの表現がよいので国宝かなと思うが、壺は他のモノとの違いが分かりにくい。見ていて素晴らしいのは間違いないが、仁清ブランドが国宝へと押し上げたのかもしれない。

【平成指定】正倉院

国宝の指定はほぼすべて重要文化財の中から選択される。重要文化財は国の大切な財産で、数多く指定を受けているので、その中から選ぶのが最も効率的であるためである。しかし、重要文化財でないにも関わらず国宝指定を受けたものがある。正確に言えば、重要文化財指定と国宝指定が同時になされたものがある。それが正倉院である。

文化財保護の関係で、国内の文化財は基本的に指定対象になる。しかし、例外があり、所有者が調査を含めて拒むことと、宮内庁所有(いわゆる御物)がそれにあたる。正倉院宮内省管轄の物件であるので、これまで指定されて来なかった。ところが、ユネスコ世界遺産の指定を受けるためにはその国の法律に基づいて文化財が保護されていなければならないことから、正倉院は国宝指定を受けて、1998年に古都奈良の文化財としてユネスコ世界遺産となった。国際基準が宮内省を動かし、重文と国宝同時指定を実現させた。

【平成指定】旧東宮御所(迎賓館赤坂離宮)

もっとも最近に造られた国宝はなにか。それは迎賓館赤坂離宮である。明治42年にのちの大正天皇が皇太子の頃に建てられた住まいで、それを外国の要人を迎えるための迎賓館にしたものである。

すべてが洋風で、細部にわたってこだわり抜いて作られた建物である。それぞれの部屋にテーマがあり、そのテーマに相応しいものが飾られている。その一点一点が芸術の最高峰で、見学に費用が発生するが、美術館へ観に行くとその拝観料の倍は取れそうな品々の展示となっている。

国宝に指定されたことから、公開が始まったのならば、平成指定は秘密のベールを市民レベルに開放する一助となっている。

【平成指定】慶長遣欧使節関係資料

国宝指定で海外産のものはそう珍しくない。ただ、ほとんどが大陸文化、つまり漢字文化圏の美術品だ。輸入相手が大陸であったことに由来し、必然的な面がある。

だが、国宝の世界でも国際化が進んだのが平成だ。伊達家がヨーロッパに派遣した支倉常長たちご一行が持ち帰った資料で、2001年に国宝、2013年にはユネスコ世界記憶遺産に指定された。安土桃山時代西洋文化と直接接点を持つようになった歴史的な資料で、ユネスコの遺産指定が後押しとなって東洋文化以外のものの指定が増えるかもしれない。

【平成指定】婚礼調度類(徳川光友夫人千代姫所用)

嫁入り道具が国宝になる。いまや死語となりつつある嫁入り道具。形式的なものは残っているものの、昔のような”嫁に送る”ため、家具などの一揃えを買って持っていくことはなくなった。少し大きな都市に行けば格安家具屋は道路沿いにあり、食器類も100円均一ショップに売っている時代、良い意味で調度するのが楽になった。

だが、江戸時代、それも征夷大将軍の娘ともなると婚礼調度品は贅の極みで揃えられる。それぞれ単品でも黄金に輝く一級品の蒔絵美術品だ。それが同じ源氏物語の初音を主題にして一式作られている。まるで絵巻物を見ているような仕上がりで、現在再現するならいくらかかるのか想像もできない。どれだけ娘を愛していたかの最上級の表現方法だろう。

国宝は2017年10月3日~11月26日が会期で無事終了した。 この展示会に出ていない800件以上の品々も見ていきたい。