
法隆寺から歩いて行ける距離だが少し離れた場所にある古刹が2つある。一つは国宝の三重塔を有する法起寺。もうひとつはこちらも三重塔を有する法輪寺である。JRの駅から法隆寺まで少し距離があり、法隆寺から2つの寺院も訪れるとなると時間がかかるので、足が遠のいている。ただ、今回は見たいものがあったので足を延ばした。
法輪寺の三重塔は初層を開くのはなく、再建50年の節目となる2025年秋に公開されると聞き、正倉院展とともに行くことにした。塔の悲劇の運命から再建への道のりを以前訪問した際に聞いていたことも足の伸ばすキッカケであった。
もともとの塔は江戸時代に再建されたもので、旧国宝に指定されていた。戦中の物資不足により金属回収などがあった時期、昭和19年に塔へ落雷による火災で崩壊した。釈迦如来像や四天王像といった仏像は火災の際に避難させることができたのが精いっぱいだったそうだ。戦争が終わり塔の再建を考えるものの、資金や物資が不足していて遅々として進まなかった。作家の幸田文などの尽力もあり、往年の姿で再建されたのが1975年だった。今年はそれから50年に当たりため、記念して初層が公開された。資材集めなどで大変苦労したようで、大きな木材は海外から取り寄せた。普段公開していないこともあり、開かれた扉から良い木の香り(もしかしたら見えないところで焚いていたかも)が薫っていた。中に鎮座している仏像たちも歴史のある。釈迦如来像や四天王像は中世に作られたもので、講堂(兼収蔵庫)に鎮座している巨大仏像たちと違った趣がある。普段は非公開がもったいないぐらいだ。
見たかった法輪寺の三重塔初層のあとは国宝の三重塔を見に法起寺へ行く。コスモス畑が寺の前にあり綺麗に咲いていた。法起寺の三重塔は日本最古のもので写真写りがとてもよい。高さは23.9mと塔としてそれほど高くないが周りに高い建物がほとんどないため絵になる塔である。法隆寺の五重塔、法輪寺・法起寺の両三重塔がある斑鳩の風景が戻って50年だが、これからも続いていってほしい。