源氏物語の作者である紫式部は、藤原道長の要請で宮中に上がった。その1008年秋から1010年正月までの、宮中の様子を中心に書いた日記と手紙が残っている。それらを絵と詞書に書きあげたものが紫式部日記絵詞である。
藤田美術館蔵のものは1917年まで館林藩秋元家が保有していたもので。美術品売立で藤田家が落札した。藤田美術館が保有しているものの内容は前半、蜂須賀家に伝来してきたものに続く場面であり、各大名に分けられて拝領したものと分かる。
藤田家は5段分を保有していて、今回の展示では第二段にあたる十六夜の月の夜の舟遊びを公開していた。貴族たちが月見を兼ねて優雅に舟遊びを興じている風景は平安文化そのもの。現在にも残るお月見文化がその頃から続いていることが知れる。紫式部の表現力と御堂関白記に見る藤原道長のなんでも記帳する性格を絵詞で表現している。まさに、「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」と読みたくなる絶頂時期だ。