数多ある大学で仏教系やキリスト教系はよく目にするが神道系はあまりない。明治政府が国家神道を推奨していたにもかかわらずである。具体的には2校しかなく、三重県伊勢市の皇學館大学と渋谷区にある國學院大學だけである。
渋谷区にある國學院大學の校舎地下1階には博物館があり、開館期間ならば誰でも見ることが出来る。ちょうど伊豆の修験道に関する展示会を開催していたので見に行った。
企画展示は受付入ってすぐの場所で開催。山岳信仰と山伏たちの修行が一緒になったもので、聖護院と醍醐寺、金峯山寺が有名。比叡山や熊野・大峰山が修行の場で、この他に立山、石鎚、出羽三山、富士山など、そこに山があるから信仰が生まれている。
もともと、日本のほとんどが山ばかりで、平地が少ないため信仰心が生まれるもの必然的で、伊豆半島もほぼ山のため、ご多分に漏れず信仰の場となった。そもそも化石燃料が大量に使われる以前は木々は大切な燃料源のひとつとされてきた。そこに利権が生まれ、それを力づくで守るために山伏の修行はうってつけだった。
さて、信仰の対象となった伊豆山には神社が置かれている。伊豆山はその古名を走湯山といい、神の神号の一つである権現と合わせて走湯権現と称してきた。その信仰の一端を企画展では紹介している。
その展示品の中に、国宝の称名寺聖教より走湯権現当峯辺路本縁起集が陳列されていた。鎌倉からほど近く、幕府誕生に大いに貢献したであろう伊豆の山伏たちについて書かれている。その他、信仰のために作られた不動明王や、修行で使用したであろう法螺貝など、点数は少ないが充実した展示となっていた。
企画展以外にも常設で國學院大學の教員が集めた品々や、神道で使う道具の再現などもあった。学校史ゾーンにあった有栖川宮家・高松宮家ゆかりの品々は収集物とは違い、下賜されたもので、ここだけは輝いて見えた。皇學館大学博物館は根津美術館と山種美術館の中間ぐらいにあるので、今後はどちらかに行くついでに訪れたい。