NHKでは「東京国立博物館のすべて」に合わせた番組が矢継ぎ早に放送されている。BSプレミアムでの開幕直前の会場での内覧生中継を皮切りに、英雄たちの選択、歴史探偵、日曜美術館と切り口を変えて紹介した。そして今後は、チコちゃんに叱られる!で取り上げられ、鑑賞法は無限大!「未来の博物館」へようこそ!で一旦の区切り、まだまだ取り上げる予定のようだ。続いて、民放の美術関連番組も取り上げないはずがないので、ビデオレコーダーの予約に余念がない。
さて、東博150年展は平治物語絵巻、雪舟2作を見終えた後は、書、そして中国画のコーナーとなる。書は刀の次に分かりにくい代物。絵や金工、彫刻などは見れば分かることが多いが、刀は同じに見えてしまう一方で書はどれも全く違うが個性が強すぎるものや、書いた背景が国宝となっていることがあり、一見しても評価しにくい。会場でも、小声ではあるが使用されている紙の艶やかさを絶賛しているのは聞こえたが、書体の評価はあまり聞かれなかった。
書跡で一番人を集めていたのが古今和歌集(元永本)。ヘッドホンでの解説があったとはいえ、展示してあった国宝の書跡の中で、教科書に記載されていた記憶が残っている作品だったためだろう。
元永本はすべてが完全に揃っている最古の写本で、色染めした紙に中国風の型文様を雲母で刷り出した上、金銀の切箔や砂子をまいた華麗絢爛に仕上げている。紙自体が芸術性が高く、国宝の金工細工に引けを取らない出来栄えである。その上に古今和歌集を書いているのだから、書体のうんぬん評価がなくても視覚的に見とれてしまう。
個人的には賢愚経残巻(大聖武)が大きな文字で力強く書いているので見応えあった。また、東洋書跡も同じ空間にあり、漢字文化圏ならではの空間演出となっていた。