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【茶の湯】大井戸茶碗 銘喜左衛門 孤蓬庵

メインビジュアルにもなっている茶碗、銘喜左衛門・大井戸茶碗は大徳寺塔頭寺院である孤蓬庵が所蔵している。ちょうどこの数カ月前に特別公開をしていたので訪れたばかり。その時にはさすがに茶碗は見ることができなかった。

孤蓬庵は小堀遠州が自身のために建立した菩提寺で、重要文化財の茶室「忘筌」が有名である。各部屋から見える庭の風景は、それほど広くないはずの庭園を見せ方の工夫だけでまるで別物になる設計で庭師の秀逸作。とくに忘筌では障子を上部分のみ残し、開いた下部からちらりと庭園を覗かせる。ちらりと見せることで次の部屋で見る庭園風景への期待感を高めている。また、空いた下の部分は実用的に光りが差して床に日差しが落ちる仕組みとなっている。落ちた光は磨かれた床で乱反射して天井へ。天井も光が反射しやすく白っぽく加工しているので、全体に自然光がまん延するように造られている。電灯のない時代、工夫を凝らした明り取りである。この他にも国宝・龍光院の書院とほぼ同じ構図の茶室がある。龍光院に入った人が少しだけ違うと語っていた。庭園・建物を熟知した小堀遠州ならではの遊び心ある出来となっている。

そんな孤蓬庵が所蔵しているのが大井戸茶碗である。朝鮮半島で焼かれた井戸茶碗。その中でも大ぶりの作品である。白磁青磁のような高級な陶磁器ではなく、庶民が使う茶碗なのだが、「侘び」茶に合う風合いから茶人に愛される品となった。

竹田喜左衛門が所有していたことから銘が取られているが、喜左衛門以下、松平不昧、その長男と所有者が変わるたびに、その主が腫物に悩まされることなり、孤蓬庵に渡ることとなった。庶民が使う家具が茶道的視点で見れば国宝となる。侘びの心髄が分からないので、どうしても白磁青磁、楽焼のようなユニークさに目移りしてしまう。だが今回の展示会のように、目移りする作品が多い中にあっては、逆に大井戸茶碗の普通さが際立つ。周りを一級品で囲まれた環境でないで分からなかった境地だ。この辺りが侘びなのかもしれない。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。