国宝の中で観る視点で全く別の内容での展示カテゴリーが複数ともに国宝指定に相応しいものはそれほどない。円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書は宗教と書跡の両面で国宝クラスとなっている。
宗教面は円珍が大師の称号に相応しいと認定された点で、天台宗寺門派の確固たる位置づけが確定した。書籍としては中務省で宮中の文章を書く仕事をしていた小野道風の作。後に藤原行成と藤原佐理と並んで三蹟と称された人物が官吏の身で書いたにも関わらず、草書の混ざる行書で書いて個性を見せている。もちろん、公文書である勅書であるため、天皇玉璽がバンバン押されており、書としての価値を高めている。
伝説の僧侶のための勅書を、伝説になる書家が書く。奇跡のコラボが堪能できる。