国宝を観る

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国宝を楽しむため、いろいろ書いています。 勉強不足でも観れば分かる。それが国宝だ。

伝教大師入唐牒 延暦寺

最澄天台宗のすべて展は2021年秋に東京国立博物館で始まり、冬が九州国立博物館、そして2022年春に京都国立博物館と巡回した。共通する展示もあったが、それぞれの地域に合わせた展示内容となっていた。だが、あまり認識されていないようで、京博には大混雑するほどには人が来ていなかった。

原因はキービジュアル。東博か九博で見た同じような展示を彷彿とさせるものが大きく、京博のみ出品が隅に追いやられている。開催が後になることが分かっているのだから、京博オリジナルを前面に出していたら春の陽気と共に来場者が殺到していたことだろう。まぁ、ゆっくり見ることができたのでそれはそれで顧客満足度が高い展示会だった。

この巡回展には九博を除く、東博と京博に行った。東博では天台宗の名僧ごとに時系列でコーナーを造り、分かりやすい配置となっていた。京博は平成館の展示用ショーケースの問題もあり、書や絵画、彫刻など分野ごとに展示。配置を作り込みによるオーダーメイドができない既設の展示会場の限界だ。

いつも通り、3階から下っていく鑑賞方法で、3階入り口に国宝の聖徳太子及び天台高僧像の龍樹と善無畏と天台四祖像の後に書が並ぶ。経典などがあるなかでも、最澄が世に出る契機となる海外留学時のパスポートである伝教大師入唐牒は天台宗では最重要アイテムのひとつであろう。正規の留学僧であったことを示すとともに、この入唐がなければ天台宗は存在しえない。以後の円珍、円仁といった名僧も最澄のように大陸へ渡り、学んだことが天台宗の内容充実に生かされ、鎌倉仏教を生み出した僧侶たちの学びの場へと発展した。

入唐牒は最澄自筆に申請とそれを許可した形の書類となっている。明州と台州の2通が存在する。最澄の自筆と分かる書としては天台法華宗年分縁起や久隔帖、羯磨金剛目録、請来目録があり、今回は請来目録と伝教大師入唐牒が展示されていた。しっかりとした力強い字で、正式書類となっていることもあり空海に比べると読みやすい字である。大陸で直接学んだということと、南都仏教に対抗する必要がある時代背景が最澄、そして空海を生み出す。その歴史の生き証人的な書である。

国宝拝観者たちの夢、それは千件越え。 毎年、国宝指定数が増えているので、容易にはなってきているものの、一つの目標である。 900件を超えた辺りから新規の拝見ペースが落ちているが、果たしていつ達成なるか。